当研究室ではライトシート顕微鏡という、この10年ほどで急速に注目を集めるようになった顕微鏡を扱っている。必要に応じて顕微鏡自体の開発、改良も行っている。
ライトシート顕微鏡は、共焦点レーザー顕微鏡や2光子顕微鏡と同じく、光学切片を得ることで3次元(XYZ)、4次元(XYZT)の蛍光像を撮る顕微鏡である。しかし、ライトシート顕微鏡は側面から光を当てる点が他とは大きく異なる。
ライトシート顕微鏡の基本原理。
この顕微鏡の長所は、一言でいえば高速さと光照射による試料ダメージの少なさである。前者は(他の顕微鏡がポイントスキャンなのに対して)基本的に面で撮影していること、後者は観察したい平面にしか励起光を当てていない、照射エネルギーの少なさによる。
この高速性を生かすと、原生動物の運動など非常に速い現象のイメージングが可能になる。また透明化した巨大な試料を見るのにも適している。透明化した試料は奥まで見えるためZスキャンの回数が非常に多くなり、かつ巨大な試料でタイリング撮影を行うと、ポイントスキャンでは何時間もかかってしまうからである。
光によるダメージの小ささは、たとえば光毒性がよく問題になる発生現象のライブ観察では、ライトシート顕微鏡を使えば光毒性をあまり気にせず時間解像度を上げることができる。
一方で、空間分解能については共焦点には一歩譲る。NAの大きな対物レンズを使えないせいである。深部観察能については、体感的には共焦点顕微鏡と2光子顕微鏡の中間である。ライトシート顕微鏡では深部は暗くならないがぼやけていく。
また、同一平面内でも照射光がサンプルに入る場所ではきれいな画像が得られるのに対し、反対側では背景光の増加や縞状の影が発生して画質は劣化する。
現在、自分達の研究のためにマウス胚発生を観察している他、共同研究としてたとえば以下のようなものを観察している。
- ゼブラフィッシュ胚発生(原腸陥入、血管形成)
- アメーバの細胞運動(オオアメーバ1、オオアメーバ2、マヨレラ)
- テトラヒメナの繊毛運動と遊泳
- カイメンの組織構築
- ショウジョウバエ幼虫の神経活動
- 透明化したマウス脳、メダカ脳
EMBLで開発された、日本初導入のライトシート顕微鏡DSLM。
照射系に共焦点顕微鏡を用い、手製の検出系を組み合わせたライトシート顕微鏡ezDSLM。高速性を活かした撮影に供している。仕様はこちら。
市販のライトシート顕微鏡 Zeiss Lightsheet 7 (Z.1 からアップグレード)。操作性の高さから主に共同研究に供している。仕様はこちら。
DSLMで撮影した、核をGFPラベルした6.5日マウス胚の断面。核のエレベータ運動(interkinetic nuclear migration, INM)、原条での細胞陥入、中胚葉の移動がよく見える。動画はこちら。