生物時計とは生命活動を地球上の昼夜交替のサイクルに適応させるための分子機構であり、酵母や大腸菌などを除けば、藍色細菌からヒトまでほぼ全ての生物が備えている。そしてリズム発振は時計遺伝子発現の正と負のフィーバックによって生み出されていると考えられている。真核生物においては、生物時計を構成する時計タンパク質の多くが核局在のタンパク質(大多数がDNA結合モチーフをもつ)であり、量的・質的に日周変動している。細胞質で翻訳された時計タンパク質は、時刻依存的に核へ移行し、核内で転写因子として働くと考えられているが、細胞内における時間・空間的挙動、核移行の制御機構は未解明である。
我々は、生物発光リアルタイム測定法を世界に先駆けて確立し、この手法を駆使して藍色細菌の時計遺伝子クラスターkaiABCのクローニングと機能解析に成功した。そして、この戦略をモデル高等植物シロイヌナズナへ拡張し、リズム発振に必須な植物時計遺伝子PCL1のクローニングに成功した。
本研究においては、以下の3点を明らかにし、時計タンパク質のリズム発振機能の解明を目指す。
(1)時計タンパク質PCL1と時計関連タンパク質の挙動を時間軸に沿って明らかにする。
(2)核膜に局在する可能性がある時計関連タンパク質GIの細胞内局在と機能を明らかにする。
(3)PCL1と時計関連タンパク質との相互作用を時間軸に沿って明らかにする。 |