ヒストンアセチル化・非コードRNAによる転写活性化の物理

研究代表者 山本 哲也(北海道大学 化学反応創成研究拠点)
ヒストンアセチル化・非コードRNAによる転写活性化の物理

ヒストンの修飾状態やクロマチンの凝集状態は、転写制御に重要な役割を果たす。アセチル化したヒストンは、RNA合成酵素II(polII)のC末端領域のリン酸化酵素の足場として働き、転写開始状態から伸長状態に移行する過程を加速することが、計画研究の木村グループによって明らかにされた(Stasevich et al., Nature, 2014)。最近の研究によって、polIIのC末端領域をリン酸化するP-TEFbとアセチル化したヒストンが相分離によって凝集体を形成することが明らかになった(Wu et al., Nature, 2018 & Gibson et al., Cell, 2019)。一方、非コードRNAが凝集体を形成し、凝集体にアンカリングされている遺伝子が活性化する事、非コードRNAによってヌクレオソームが不安定化する事が、計画研究の斎藤グループによって明らかにされている(Fujita et al., Comm. Biol., 2020)。私たちは、前期の研究で、ヒストン修飾によるクロマチンの相分離と転写によるRNA生成が駆動する相分離の理論を構築してきた。本研究の目的は、私たちが前期で構築した理論を拡張して、1) アセチル化したヒストンが誘起する相分離がRNA合成酵素IIのC末端領域のリン酸化速度に与える影響と、2) 非コードRNAの転写が凝集したクロマチンを転写活性状態にする機構を理論的に明らかにすることである。

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