嗅覚受容体とβグロビン、2つの遺伝子クラスターが織りなすクロマチンポテンシャル

研究代表者 廣田 順二(東京工業大学 生命理工学系)

ゲノム上最大の遺伝子ファミリーを形成する嗅覚受容体は、魚類から哺乳類に共通したClass I型と陸棲動物特異的なClass II型に分類される。最近我々は、Class I嗅覚受容体の転写調節配列(エンハンサー)を世界で初めて同定した(Nat Commun, 2017)。J-elementと命名したこの新規エンハンサーは、155個のClass I遺伝子からなる約3 Mbの巨大遺伝子クラスター全体を制御しており、“制御する遺伝子数”と“ゲノム上の作用範囲”の両方において他に類を見ない規模で遺伝子発現を制御する。興味深いことにClass I遺伝子クラスターは、βグロビン遺伝子クラスターを内包する。両遺伝子クラスターともに遺伝子座調節領域(J-element / LCR)がクラスター内の単一遺伝子発現を活性化するという特徴を有する。本研究課題では、この進化的に保存されてきた2つの遺伝子クラスターの機能的相互作用を解析し、Class I嗅覚受容体遺伝子とβグロビン遺伝子が織りなすクロマチンポテンシャルの解明を目指す。

説明図1:マウスCass I嗅覚受容体遺伝子クラスターとβグロビン遺伝子クラスターの構造

嗅覚受容体とβグロビン、2つの遺伝子クラスターが織りなすクロマチンポテンシャル

マウスにおいてClass I嗅覚受容体遺伝子は155個存在し、7番染色体上に3 Mbに及ぶ巨大遺伝子クラスターを形成する。Class I嗅覚受容体遺伝子のエンハンサーとして同定されたJ-elementは本遺伝子クラスーター全体を制御する。本遺伝子クラスターにはLCRによって制御されるβグロビン遺伝子クラスターが内包される。このゲノム構造は陸棲脊椎動物間で進化的に保存されている。

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