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研究内容 |
生命現象の根幹をなす、核内現象(転写、複製、修復、組換え)は遺伝情報(ゲノムDNA)に基づいている。伸張したとすると、約1.7-8.5 cmの長さになるゲノムDNAは、ヒトの細胞において直径約5-20 μm程の細胞核にクロマチンとして収納されている。すなわち、クロマチンの理解が核内現象の理解には必要である。
そのクロマチンの最小基本単位はヌクレオソーム粒子である。ヌクレオソーム粒子が連なりヌクレオソームファイバー(10nmファイバー、DNA linear packing ratio(DLPR)=約6)となる。10nmファイバーは30nmファイバーに凝縮する(DLPR=約40)。さらにいくつかの段階を経て間期核のクロマチンに凝縮する(DLPR=約1,000、図参照)。間期のクロマチンがさらに凝縮し、M期の染色体となる(DLPR=約10,000)。この教科書にも記載されている記述にはギャップがある。DLPRが40の30nmファイバーとDLPRが1,000の間期核の凝縮したクロマチンの間が飛躍している。すなわち、この間を結ぶ新たな構造があると考えられる。
最近、30nmファイバーよりも凝縮したクロマチン(“クロモネマファイバー”と呼ばれる60-130 nmのファイバー)が電子顕微鏡観察され、さらに、このファイバーがin vivoで転写に際し、脱凝縮することが蛍光顕微鏡で観察されている。このクロモネマファイバーは上記のギャップを埋める構造であると考えられる。
本研究ではこのクロモネマファイバー構造の解析を目的とする。現在のところ、それらの構造を検出する生化学的方法がない。30nmファイバーよりも凝縮した間期核内に存在するクロモネマファイバー構造の生化学的な検出法の開発を目指す。 |
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須賀 則之 (研究代表者)
<独)理化学研究所 ゲノム科学総合研究センター
タンパク質構造・機能研究グループ タンパク質構造研究チーム 研究員> |