染色体DNAや核内タンパク質が構築する細胞核の高次構造の解明は、複製標識法やGreen fluorescent protein (GFP)など蛍光タンパク質を用いたDNAおよびタンパク質の新しい可視化技術の開発と、顕微鏡や画像解析技術の進歩により急速に進んでいる。その結果、核の高次構造が予想以上に整然としたものであり、かつ動的であることを明らかになった。染色体DNAは無秩序に混ざりあっているのではなく、それぞれの染色体別に核内の特定の領域に整然と存在し「染色体領域」を形成しており、また、様々な核タンパク質は核内で点状、網状などの分布を示し核内の特定の領域に集積し「非クロマチン核内ドメイン」を形成していることがわかってきた。さらに、これらの細胞核内高次構造体は、動的な構造体であることが示されている。核高次構造は、遺伝子の複製、転写および修復などの核機能における素反応の場と密接な関連があると考えられている。しかし、核内高次構造体の局在、動態が転写、複製、修復などの核機能の制御にどのように関与しているのかについては未だ不明な点が多い。
本研究では、細胞核高次構造、特に非クロマチン核内ドメインがどのように核機能の制御に関与しているかを明らかにすることを目指している。このために我々が開発した新しいバイオイメージング技術を用いて、非クロマチン核内ドメインの局在・動態と核機能の関連の詳細な検討と、核内ドメインの局在・動態を制御する「足場」構造の解明に取り組む。本研究から得られる知見は、新しい核内情報統合機構の発見につながり、生命現象の理解への重要な貢献となる。さらに核内ドメインの局在・動態情報は、様々の疾患の新しい診断法、治療法の開発に結びつくことが期待される。 |