植物学者 塚谷裕一の
調査旅行記

南アフリカ調査(2000年12月)

 2000年12月初旬より2001年1月初旬まで、基盤研究(B)(2)「一葉植物(イワタバコ科)の進化学的研究」による支援の下、前年同様、日本女子大の今市涼子教授を隊長とする海外学術調査に参加しました。

 今回はアジアではなく南アフリカとマダガスカルを対象地域とし、前年調査したモノフィレアの近縁属、ストレプトカーパス属の探索をおこなってきました。以下、2回に分けて、この調査の模様を御紹介します。

 南アフリカの方は1週間以内の調査で、ほんのちょっと垣間見ただけ、というところですが、それにしてもアジアに慣れた身には、アフリカというのはずいぶん違うものに感じます。アパルトヘイトがあったことで有名な南アフリカ、どうしても人種問題に目が向いてしまいました。お世話になった宿がまた、それを象徴するようなところで、大農場主(?)の白人の主人が経営する宿付きレストラン。豪奢な、いや、豪奢だった建具に大時代的な装飾品が満ちあふれる中、夕食はフランス料理のフルコースです。ヨーロッパに置いたらこれは完全に時代遅れの暮らしと階層でしょう。それが、アフリカという土地の事情によって、辛うじて残照の中、生き延びているのでした。

 それはともかく、植物です。大都会のダーバンから高速に乗って郊外に抜けますと、急に視野が開け、草原に樹が疎らに生えているという風景になりました。樹は青々としているのに、なぜか林にならず、かなりの間隔を置いて、均一に、そしてまばらに生えているのが奇妙です。モノフィレアの自生地からの連想で、降雨林に行くのだと思いこんでいた胡乱な頭にとって、これは衝撃的でした。そう、サバンナです。

South_Africa1 
南アフリカのサバンナ

 そのサバンナの岩山は、遠目にはただの草っぱらですが、車を降りて歩いてみると、これが色とりどりのお花畑でした。それも、ショッキングピンクやコバルトブルーのあふれる、絢欄たる彩りのお花畑です。種類も園芸店で売っている花そのままで、グラジオラス、カラー、サンダーソニア、ゼラニウム、ワトソニア、アッツ桜、とにかく目白押しです。面白いのは、日本のお花畑やネパールヒマラヤ、アラスカなどと違って、ブルー系の花が大変多かったことです。とにかくカラフルで、園芸植物の多くがアフリカ原産なのは、もっともだと感じ入った次第です。

 それはともかく、目的としたストレプトカーパスはというと、これもちゃんと見つかりました。写真はStreptocarpus gardeniiです。あ、これなら花屋で見たことがある、と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そう、これはいわゆる園芸種のストレプトカーパスの、交配親のもととなった原種です。この種はサバンナ草原ではなく、近くの森の中を流れる沢沿いに生えていました。近縁属のモノフィレアと違い、乾いた岩山や木の幹、川の中にある岩の上など、種によってずいぶん生育環境は多様だったのです。

South_Africa2 
ストレプトカーパス(Streptocarpus gardenii

マダガスカル調査記へと続く:

(2001年1月30日)