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ES/iPS細胞からの卵子の作製

 生殖細胞系列は始原生殖細胞(Primordial Germ cell: PGC)からはじまり、様々な分化過程を経て配偶子に分化する。マウスのPGCは受精後6日目に多能性細胞集団エピブラストから骨成長因子4(BMP4)のはたらきにより分化したのちに、将来の卵巣または精巣である生殖巣へ移動して卵子または精子への分化を開始する。
 我々はこれまでにPGCの分化を包括的に解析するツールとしてES/iPS細胞からのPGCの分化培養系の開発に成功している。この培養系では、まずマウスのES/iPS細胞をエピブラストによく似たエピブラスト様細胞(EpiLC)に分化させたのちに、BMP4の刺激によりPGCとよく似たPGC様細胞(PGCLC)を分化誘導する(図)。得られたPGCLCは精巣へ移植すると精子に分化し、胎仔卵巣の体細胞と凝集培養したのちに卵巣に移植すると卵子に分化することが明らかとなっている。本論文ではそれらのうち、ES/iPS細胞からのPGCLCの分化誘導系、およびそれらを卵子へ分化させるための凝集培養、卵巣への移植、得られた卵子の体外成熟・体外受精の方法について詳細に記載した。このプロトコールは比較的経験のない実験者でも再現ができるように、それぞれの実験段階を詳細に記載しており、多くの研究者の参考になると思われる。

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図の解説
(A) 実験手順の概略:雌のES/iPS細胞からEpiLC、PGCLCを分化させたのち、雌の胎仔から取り出した生殖巣の体細胞と凝集培養することにより再構成卵巣を作製する。その後、再構成卵巣を雌の卵巣被膜下に移植したのちに卵子を採取し、体外成熟・体外受精を行う。
(B) 実験の一例:移植後4週間目の再構成卵巣に認められる蛍光タンパクを発現する卵母細胞(i)、再構成卵巣より得られた未成熟卵(ii)と蛍光タンパクの発現(iii)、体外受精により得られた受精卵(iv)と産仔(v:矢印)。

「発表雑誌」
Nature Protocols (2013)
タイトル:“Generation of eggs from mouse embryonic stem cells and induced pluripotent stem cells”
著者:Katsuhiko Hayashi & Mitinori Saitou  >> 詳細

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