サイクリック電子伝達とは?

光合成は,太陽光を集め,そのエネルギーを2つの光化学系に与えて電子を移動させる反応です.電子の移動とともにATPが合成され(光リン酸化),二酸化炭素から炭水化物が合成されます.

電子の移動経路は,水→光化学系II→シトクロム bf→光化学系I→NADP+と移動する経路が「リニア電子伝達経路」として広く知られていますが,歴史的には,リニア電子伝達の発見よりさらに4年前,1954年に「サイクリック(循環的)電子伝達経路」が発見されています.サイクリック電子伝達では光化学系IIは使われず,電子は光化学系Iの回りを循環します.その際,リニア電子伝達より多くのATPが合成されるため,サイクリック電子伝達は多くのATPが必要な環境で働きます.植物は,必要に応じてリニア/サイクリック2つの電子伝達のバランスをとり,効率良くしかも逆境に強い光合成を行っているのです.

ところが,サイクリック電子伝達の詳細は謎に包まれていました.光化学系Iを出た電子がどの分子を経由して光化学系Iへ戻ってくるのか,長い間わからなかったのです.