生物は共通の祖先から由来したので、すべての生物は1つの系図、すなわち系統樹上に位置付けることができます。
系図の横軸は時間であり、現在生きている生物はすべて系統樹の末端に位置し、系図の途中には過去に生きた生物が位置することになります(左図)。
厳密に考えると、種1と種2の共通の祖先にもさらに祖先がいるので、遡っていくと種1と種2の共通祖先はたくさんいて、最終的に全ての生物の祖先も種1と種2の共通祖先です。「種1と種2の分岐点にいた祖先生物」は正確に言うと「種1と種2の最後の共通祖先」です。
例えば、被子植物には双子葉と単子葉を持つものがあります。
双子葉、単子葉という形質(系統推定に用いられる情報を“形質 character”と呼びます)に注目すれば、被子植物は双子葉類と単子葉類という2つの系統に分かれるのではないかと推定できます(図・左)。
しかし、この推定は間違っています。
現在明らかになった系統関係からは、被子植物の祖先は双子葉であり、双子葉類の中から単子葉類が進化してきたことが分かっています(図・右)。つまり、双子葉という形質は被子植物の共通祖先が持っていた形質であり、単子葉という形質は被子植物の中で新たに進化した形質なのです。
祖先が持っていた形質を原始形質、子孫で新たに生じた形質を派生形質と呼びます。このように系統樹のどこでどんな派生形質が進化したかを理解することが重要です。
系統樹や派生形質については、ワイリー他(1992)が参考になります。