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Report

Brown University, Dr. Gary Wessel研究室を訪問して

開催期間:2018年1月22日〜26日
開催場所:Brown University, Rhode Island, U.S.A

筑波大学 生命環境科学研究科 小林悟研究室
博士後期課程 森田俊平



 今回私は、新学術領域研究「動物における配偶子産生システムの制御」のご支援をいただき、若手研究者海外派遣事業の一環として、2018年1月22日から26日までの間、Brown University, Dr. Gary Wessel研究室を訪問しました。Brown Universityはアメリカ・ロードアイランド州の州都であるプロビデンスにあります。ロードアイランド州はアメリカ北東部・ニューイングランド地方に位置する全米で最も面積の小さい州で、プロビデンスはその州都です。街の中心部であるダウンタウンには小さなお店から大型ショッピングモールまで、さまざまなお店があるほか、電車に乗ると一時間程度でボストンの中心部まで遊びに行けるという非常に利便性の高い街であると感じました。
 Brown Universityに関して最も印象的だったことは、大学内の研究者間での情報・技術共有が盛んなことでした。セミナーへ複数のラボのメンバーが出席し、情報交換が行われているだけでなく、他のラボで実際に使われている技術を気軽に習うことや、また快く教える雰囲気を感じることができました。Brown University自体が比較的小規模な大学であることも、そういった理由の一つなのかもしれません。以上の理由から、Brown Universityの各デパートメントやそれに付属する5つの病院も含めて成熟した研究者コミュニティーとして機能しているという印象でした。
 今回の出張の目的はDr. Gary Wesselのラボを見学するとともに、セミナーを行うというものでした。二年前にNew YorkのCold Spring Harbor Laboratoryで開催されたGerm Cell Meetingだけでなく、昨年、福岡で開催された当新学術領域の国際シンポジウム「Regulation of Germ Cell Development in vivo and in vitro」においてもDr. Gary Wesselと話す機会がありました。その際に、ウニにおける生殖系列の発生過程に関する研究テーマに興味を持ち、彼のもとで研究したいと考えるようになりました。そして今回、彼のラボを訪問する機会を得ることができました。セミナーでは現在の研究テーマである「The Novel Mechanism Establishing Transcriptional Quiescence in Primordial Germ Cells in Drosophila melanogaster」という内容で発表させていただきました。Germline segregation におけるRNA polymerase IIの転写抑制状態の確立は、ショウジョウバエやウニだけでなく、生物種間で保存された現象の一つです。Dr. Gary Wesselもこういった現象に興味を持って研究を進めており、お互いの興味・関心を共有することができました。さらにセミナーではラボメンバー以外の参加者も含めて活発な議論が行われたことで、自分にとって有益な助言等を得ることができました。その後のラボメンバーとのDiscussionでは、最先端の未発表データを紹介されたことで、ウニの生殖系列研究に関する最新の知見・技術に触れることができ、とても刺激的で有意義な訪問となりました。現在Dr. Gary Wesselはウニやヒトデといった棘皮動物にとどまらず、ヒトやマウスのサンプルを使った実験も始めています。このように多様な生物種を用いることで、生物種間で共通するメカニズムを明らかにすることができます。今後、ウニを用いた研究とヒトやマウスといった哺乳類を用いた研究が、お互いに影響を与えあうことで、より良い研究が進んで行くことを予感させるものでした。
 今回のBrown University訪問は、初めて一人で海外へ行くということだけでなく、初めての就職活動でしたので、うまくいくか不安な部分も多々ありました。しかし小林研のメンバーや、Dr. Gary Wesselおよびそのラボメンバーの協力のおかげで無事に成功させることができました。そしてなにより、今回の訪問の機会を与えていただいた新学術領域および関係者の皆様に深く感謝致します。

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(左・中央)プロビデンスの街並み
(右)ラボの入っている建物。Sidney Frank Hall for Life Science

写真提供:森田俊平


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