宮澤 淳夫
宮澤 淳夫MIYAZAWA ATSUO
兵庫県立大学 大学院理学研究科・教授

電子顕微鏡観察では、試料を真空中に置くため試料を脱水・乾燥しなければならず、観察時の構造や組成の変化が大きな問題でした。この問題を解決するため、含水性試料や液体材料を急速凍結しただけのネイティブに近い状態で、分子レベルの構造解析を可能にしたのがクライオ電子顕微鏡法です。生物試料から物質材料まで試料を乾燥させることなく、化学固定等も行わないため、試料の微細構造の保持に優れています。また、極低温(液体窒素温度)で観察するため電子線ダメージを大幅に軽減でき、高分解能で高精細な観察が可能となります。試料の急速凍結(浸漬凍結、高圧凍結)から、凍結割断や凍結切削などの凍結試料調製を経て、凍結試料のクライオTEM/クライオSEM観察を行うためのトレーニングを、それぞれの技法ごとに年数回に分けて実施します。さらに、一般的な電子顕微鏡法、各種の試料作製法についての相談や技術トレーニングについても個別に対応します。
クライオEMワークフロー
試料の急速凍結から始まる最先端のクライオ技法をメインとして、様々な試料調製装置を連携して用いることによる凍結試料作製からクライオEM観察までのクライオEMワークフローのトレーニングと支援を行います。

クライオSEMシステム
真空クライオトランスファーを用いて、凍結割断装置および凍結ウルトラミクロトームによる試料調製とクライオSEMをリンクさせたクライオSEMシステムによる凍結試料のクライオSEM観察のトレーニングと支援を行います。

クライオTEM観察とクライオSEM観察
観察したい試料の大きさや状態により、凍結超薄切片のクライオTEM観察が良い場合と、凍結割断面または凍結切削平面のクライオSEM観察が良い場合とがあります。目的に応じてこれらの手法を使い分けて観察することが可能です。

カゼインミセルの観察(CEMOVIS)
生乳中のカゼインミセルの微細構造を明らかにするために、クライオTEM観察(CEMOVIS)を行いました。その結果、カゼインミセルの表面は凸凹しており、その内部には水で満たされた空洞が存在することが分かりました。

脂肪球の観察(氷包埋)
生乳中の脂肪球の表面および内部構造を明らかにするために、浸漬凍結法により氷包埋した脂肪球を、クライオTEMで観察しました。その結果、脂肪球の界面に沿って存在するラメラ状の油脂結晶を観察することができました。

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