真核細胞の最大の特徴は、遺伝情報をもつDNAを細胞質から隔離している細胞核の存在にあります。これまで、細胞核の諸機能は、転写、DNA複製・修復、クロマチン構造の各々の独立した研究分野で進められ、記載されてきました。しかし、細胞核は独立して細胞に存在するわけではなく、細胞核を取り囲む細胞内空間と分子情報の交換を通して緊密な繋がりを保ちながら、機能しています。また、細胞核のいずれの諸機能も、核の秩序立った内部構造を足場にしながら、互いに物理的・機能的に繋がりを保ちながら機能しています。当研究室では、細胞核の機能制御の要となる核ー細胞質間輸送、細胞核の機能を支える細胞核構築の仕組み、並びにゲノムを次世代に正確に継承するための分子装置の解析を通して、細胞核の機能と構造の関係を明らかにしようとしています。関与因子群とメカニズムの解析から、これらの個々の素過程が独立した現象ではなく、互いに連携していることがわかってきます。細胞レベルで得られた基礎的研究が生み出す知見を、癌や遺伝病などのヒト疾患や、分化・発生のようなより高次レベルの生命現象の理解へと結びつけることを目標としています。
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