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研究内容 |
セントロメア領域は染色体上に存在する巨大なクロマチン複合体であり、染色体の均等分配に重要な役割を果たす。ある種のガン細胞ではセントロメア蛋白の過剰発現が報告されている(1,2)。セントロメア機能欠損が染色体の不安定化につながり、染色体分配異常、ガン化の原因となる可能性が示唆される。我々はこれまでヒト染色体セントロメア領域の構造をCENP-Aに注目して解析し、CENP-A/B/C複合体が特異的にI型αサテライト配列上に形成され、繰り返し構造をなしてセントロメアを構成することを明らかにした(3)。ヒトCENP-Aに対する特異性の高いモノクローナル抗体を作成し、この抗体を用いて間期核からセントロメアクロマチン複合体 (ICENと略記する) の単離・精製を行い、プロテオミクス解析により約40種類 (ICEN1〜ICEN40と命名) の構成蛋白を同定した(4)。ICENはこれまでに報告されているすべてのセントロメア構成蛋白(CENP-A, -B, -C, -H, -I, hMis12)を含み、セントロメアにおける機能が報告されていない既知蛋白が15種、その他に機能未知の蛋白が約20種同定された。現在は以下のICEN構成因子の解析を行っている。ASR2A(ICEN10),MgcRacGAP/hMKLP1(ICEN17/11),Rsf1/hSNF2H(ICEN2/ 8),ICEN24,33,37。
本研究計画ではCENP-Aクロマチンのリモデリング機構を解析することを目指す。CENP-Aヌクレオソームは通常のH3ヌクレオソームとは異なりDNA複製に同調して形成されず、別のステージにリモデルすることによって置き換わるものと推測される。従ってCENP-Aクロマチンの形成に関わるリモデリング因子の存在が期待される。ICENの構成因子であるICEN17/11(Rsf1/SNF2H)複合体及びICEN6/12(FACTp140/p80)複合体がヌクレオソームリモデリングに関与することが報告されている。これらの因子がCENP-Aクロマチン形成に何らかの役割を果たしていることを期待して研究を始めた。ICEN17/11複合体を単離・精製してinvitroヌクレオソーム再構成系を立ち上げ、CENP-Aヌクレオソーム形成に果たす役割の解析を行う予定である。 |
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依田 欣哉(研究代表者)
<名古屋大学・生物機能開発利用研究センター・純系動物器官機能利用分野・助教授> |