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研究内容 |
クロマチン上の情報は一過的な遺伝子発現制御に重要な役割を果たすだけでなく、細胞分裂後や発生、分化後も維持されることにより、同じ遺伝情報を持つ細胞間の異なった表現型(エピジェネシス)を規定することが明らかとなりつつあります。
私たちは、如何にして様々なクロマチン情報が機能へと展開されていくのか?また、その機能構造はどのように制御され、維持、継承されていくのか?という問いに対して、ヒストンと相互作用する因子群を機能複合体として解析するというアプローチを取っています(Tagami
et al., Cell. 2004)。
現在、出芽酵母および分裂酵母をモデル系とすることで、クロマチン構造形成の分子基盤および、その戦略の共通性やバリエーションが見え始めました。内在性のプロモーター下で細胞周期制御が働いている条件下でヒストン複合体を解析することで、クロマチン形成装置のみならず、ヒストンを介した様々な制御が解析できる利点を活かし、複合体精製を新しいスクリーニング法の一つとして解析を進めています。クロマチン構造はDNA複製や転写、DNA修復といった様々な制御と密接に関わるため、ヒストンと相互作用する因子群をそれぞれ機能複合体として解析することにより、クロマチン制御ネットワークを網羅的・統合的に理解できることが期待されます。具体的には、クロマチン形成の分子機構とS期チェックポイントや遺伝子発現制御との関連、ゲノム安定性や細胞の癌化機構まで独自の研究を展開しようと考えています。
将来的には、「機能的複合体解析」をキーワードに生化学、分子遺伝学、細胞生物学といった従来の分野とゲノミクス、プロテオミクスといったシステムスバイオロジーを融合させる新研究領域の創造を目指したいと考えます。「如何にして遺伝情報は細胞機能へと展開されるのか?」というテーマが私自身のこれまで一貫した研究目標であり、ポストゲノム時代の今、この古くからの重要課題に対して常に新しい切り口から挑みたいと思っています。 |
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田上 英明(研究代表者)
<名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科・助教授> |