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文部科学省科学研究費補助金「特定領域研究」細胞核ダイナミクス
領域代表者挨拶
しきり線
 
特定領域研究「細胞核ダイナミクス」を夢見て
領域代表  米田悦啓 (大阪大学生命機能研究科教授)
 

 多くの方々のご尽力、ご助力により、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「細胞核ダイナミクス」が発足しました。5年間の計画申請ですので、本年度より平成20年度まで続きます。「夢見て会し、夢叶うまで」という気持ちでのスタートとなりました。多くの研究者が、それぞれの夢を抱いて集い、活発な議論を通して緻密に計画を練り、本特定領域の立ち上げに向けた最大限の努力を重ね、幸いにも、今、その夢を叶える絶好の機会を与えていただいたということかと思います。

 今回、領域代表をお引き受けするに当たって、私自身には、大きく3つの夢があり、今ももちろんそれらを持ち続けております。先ず、1つは、これまで日本で脈々と続いてきた「細胞核」関連の研究の流れを、次世代へより良い形で引き継いでいきたいという願いです。私の中では、個人的にも、そして、もちろん学問的にも、京都大学の柳田充弘先生が立ち上げられた重点領域研究(当時の呼称)「染色体構造と挙動の分子生物学的アプローチ」がこの流れの源になっています。その後、九州大学の西本毅治先生が領域代表をされた重点領域研究「細胞周期制御のネットワーク」、次いで、東北大学(当時)の水野重樹先生が領域代表をされた特定領域研究(この研究期間中に重点領域研究から特定領域研究へと呼称変更)「細胞核の機能構造:分子構築と分子間コミュニケーション」と研究は引き継がれていきました。私は、水野先生の特定領域を構成する3つの研究班のうちの1つの班の研究代表者をさせていただいた関係もあり、その班のテーマであった「核・細胞質間の分子コミュニケーション」をさらに発展させる形で、特定領域研究(B)「細胞内情報ネットワークの基盤となる核―細胞質間分子輸送機構」(平成11年度〜平成15年度)を立ち上げ、運営することができました。このような流れを何とかして、より広く、より深く、より勢いよく流れるようにしたいという強い希望があります。

 もう1つは、21世紀に入り、ヒトゲノムがすべて解読されるという時代に突入したことを受け、生命科学を探求しようとする一人の研究者として、これまでにない、新しい学問体系を構築できないか、構築すべきではないかという、私の能力を省みない無謀とも言える夢です。これが、申請書で謳いました「ダイナミック細胞生物学の創生」です。従来の「分子細胞生物学・分子遺伝学」と近年進展の著しい「分子イメージング法」を融合させ、ポストゲノム時代に相応しい新しい分野を創生しようという試みです。分子イメージング技術は様々な分野で活用されつつありますが、「細胞核」はこのような新しい研究技術を生かす研究対象としてはベストではないかと考えます。つまり、「細胞核」に関する研究領域は、新しい学問体系にまで持っていくポテンシャルを持った学問的おもしろさと人材を備えていると思っています。私がこれまで出会ってきました生命現象のおもしろさや、それを示して来られた個々の細胞核研究者の卓越性はここで改めて申し上げるまでもありません。

 最後の1つは、若い研究者が自由に研究を展開させ、新しい発見を目指すことができる研究環境作りへのサポートが少しでもできないかという希望です。私自身、助手になり立ての若輩の時代から、上で述べました重点領域研究や特定領域研究の班に入れていただいた御蔭で、今日の私の研究室が存在していると言っても過言ではありません。ある一定期間保証された研究費のサポートが得られたということも非常に大きな励みになりましたし、研究班の他の方々との人的交流が、現在の私の研究活動の支えとなっていますのは異論を差し挟む余地がありません。今も、自由な発想で自分らしい研究を展開したいと考えている若い研究者は数多くおられるでしょう。その中には、そのための十分な研究費を獲得したいと考えておられる方も多いでしょうし、また、いろんな角度からのディスカッションを渇望されている方も多いでしょう。私がこれまでにいろんな方々に物心両面から支えていただいたように、本特定領域が発足することによって、意欲ある若手研究者を発掘することができ、日本の中でのびのびと研究することを少しでもサポートすることができれば、斬新な研究成果を継続的に日本から世界に向けて情報発信していくことができるであろうということを夢見ているわけです。

 このような夢は、多かれ少なかれ、今回集うことができた計画研究班員のどなたもが抱いていることと思います。また、同じような夢を抱いているからこそ、審査の高いハードルを越えることができ、今回の発足に繋がったものと考えます。今後は、上に挙げました大きな3つの夢を夢で終わらせないよう、可能な限りの努力をするとともに、全く新しい顕微鏡技術の開拓を行なっている光学関係の研究者をはじめとして、異分野の研究者とも積極的に幅広く交わり、本特定領域研究班に実際に参画していただきながら、本特定領域研究の発足は大成功であったと誰もから認めていただけるよう、日々精進すべきであると心に誓っております。これまで抱いてきた夢を超えるような大きな展開がこの5年間で見られることを夢見ながら。

 
平成16年10月
秋めいてきた大阪大学吹田キャンパスにて
         
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