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    “マウス精子形成幹細胞コンパートメントが示す階層性と可逆性の解明 - Asモデルを問い直す”

     マウス精巣に見られる「未分化型精原細胞」は、幹細胞を含む少数の細胞集団です。未分化型精原細胞は、単独で存在するAs細胞と、As細胞の不完全な細胞質分裂の結果2つの娘細胞同志が連結したApr細胞、更に、連結した細胞が同調した分裂の後も連結したままでいるAal細胞(4, 8, 16個が連結した細胞)からなる、不均一な形態を示す集団です。従来、「連結した細胞の数によって分化段階が決まっており、As細胞だけが幹細胞で連結した細胞は全て分化に向かった細胞である。」と考えられて来ました。これが、1971年Huckinsによって提唱された「Asモデル」です(図1)。

    News Release 吉田 Science
     本研究では、未分化型精原細胞の構成とふるまいを、詳細な遺伝子発現解析とライブイメージング、パルス標識後の系譜追跡により検討しました。その結果、図2のような、一見複雑な成り立ちを持つことを発見しました。まず、①未分化型精原細胞は、形態連結細胞の数とは別に、遺伝子発現によりGFRα1陽性集団とNgn3陽性集団に分けられ、②定常状態では、GFRα1陽性細胞(特にAs細胞)が高頻度で自己複製するのに対して、Ngn3陽性細胞は大部分が自己複製せずに分化することが示唆されました(図1実線矢印)。

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    しかし、③少数のNgn3陽性細胞は、GFRα1陽性に戻ったり細胞同士の連結がちぎれたりすること(図3)によって、可逆的に幹細胞に戻ると考えられました(図1破線矢印)。

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    これらの性質によって、未分化型精原細胞の集団は、しなやかに幹細胞を失うことなく精子へと分化する細胞を産み出すことが出来るのです。興味深いことに、④精巣が障害を受けて幹細胞の数が減った時には、Ngn3陽性細胞や連結した細胞の隠れた自己複製能が発揮され、速やかに幹細胞の数を回復することが分かりました。
     このようなしなやかさとしたたかさをもつ幹細胞システムの働きにより、精巣では精子を安定して作り続けることが出来るのです。

    「発表雑誌」
    Science 328, 62-67 (2010)
    タイトル:“Functional Hierarchy and Reversibility within the Murine Spermatogenic Stem Cell Compartment  >> 詳細
    著者:Nakagawa,T., Sharma M., Nabeshima Y-i., Braun R. E. and *Yoshida S.

    詳しい情報
    <基礎生物学研究所プレスリリース>
     >>  多く、長く、精子を作り続ける秘訣~ほ乳類精子形成における新しい分化モデル~

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