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    “幹細胞の寿命は意外にも短かった!〜マウスの精子幹細胞は次々と入れ替わる〜”

     次の世代へと伝わる大切な遺伝情報を持つ「精子幹細胞」は厳密に「非対称分裂」を繰り返し、精巣の中で一つ一つ大切に守られていると、当然のごとく信じられて来ました。(図1)ショウジョウバエの場合は確かにその通りなのですが、マウスなど他の動物については不明でした。

    News Release 吉田 CSC1
     本研究では、パルス標識したマウスの精子幹細胞(Nakagawa et al., Dev. Cell 2007)の運命を1年以上にわたって追跡した結果を数学的に解析しました。その結果は驚くべきものでした。個々の幹細胞は決して特別に守られている訳ではなく、平均してわずか1〜2週間の寿命しか持たず、次々と消滅していたのです。そして、失われた幹細胞は、隣の幹細胞から生まれた細胞によって補充されていました。更に、数学的解析の結果は、どの幹細胞が消えてどの幹細胞が生き残って増えていくかは、偶然に(確率論的に)決まることを示していました。
     このように、幹細胞のグループがお互いに入れ替わりながら自らの集団を維持すると同時に精子を作る細胞を供給していることが分かりました。図1の定説に代わる、新しい幹細胞の姿(図2)です。オリジナルの幹細胞だからといって特別扱いされて守られているのではありません。オリジナルは案外失われやすく、オリジナルが失われるとコピーによって補充されます。そして、オリジナルの幹細胞もコピーして作られた幹細胞も区別なく、同じ「幹細胞」として働いているのです。

    News Release 吉田 CSC2
     吉田らのグループは今までに、精子に分化を始めた細胞が幹細胞に「若返る」ことを発見しています(Nakagawa et al., Science 2010)。コピーから幹細胞が作られる時にもこの「若返り」が起こるのか、あるいは、非対称分裂ではなく2つの幹細胞を生む「対称分裂」が起こっているのか、疑問は尽きません。


    「発表雑誌」
    Cell Stem Cell 7, 214-224 (2010)
    タイトル:“Mouse germ line stem cells undergo rapid and stochastic turnover"  >> 詳細
    著者:A. M. Klein, T. Nakagawa, R. Ichikawa, *S. Yoshida and *B. D. Simons

    詳しい情報
    <基礎生物学研究所プレスリリース>
     >>  幹細胞の寿命は意外にも短かった!〜マウスの精子幹細胞は次々と入れ替わる〜

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