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    "精子幹細胞からのGermline transmissionにおけるCyclin-dependent kinase inhibitor (CDKI) p21 /p27の関与"

     精子幹細胞は自己複製増殖をするとともに分化して、一生にわたり沢山の数の精子を作る源となっている。幹細胞やその分化細胞である前駆細胞の増殖の制御は、精巣内における幹細胞数の維持や精子の産生効率を左右する重要なプロセスである。本研究では細胞周期調節因子のCyclin-dependent kinase inhibitor (CDKI)のp21 とp27に注目し、これらが精子幹細胞や前駆細胞の増殖・分化に関わっていることを明らかにした。  p21やp27を培養精子幹細胞(Germline Stem; GS細胞)に高発現させると増殖の抑制が起こること、またGS細胞は自己複製因子GDNFによりp21やp27遺伝子の発現レベルが低下することから、これらのシグナルが精子幹細胞や前駆細胞の増殖制御に関わっているのではないかと考えられた。そこで、精子幹細胞移植法によりp21KO、p27KO マウスの精巣における幹細胞の機能的活性を調べたところ、幹細胞活性と分化能は保たれており、幹細胞数も野生型と差が見られなかった。しかしながら、我々は通常の精子幹細胞移植法では検出できない差異があるのではないかと考え、更にCompetitve transplantation assay (競合的移植アッセイ)を行った。 この方法は野生型の幹細胞と1:1でミックスして移植を行うというもので、競合させた場合の幹細胞の優位性を判定できるものである。この方法で移植したレシピエントから生まれた仔のゲノタイプを長期にわたり調査したところ、野生型に比しp21KO由来の仔が優勢に生まれるのに対し、p27KO由来の仔は殆ど生まれなかった。さらに継代移植にて幹細胞の自己複製活性を調べたところ、p21KO由来の幹細胞では有意に低下していることが分かった。これらのことから、p21, p27などのCDKIは精子幹細胞からのGermline transmission効率に影響すること、p27遺伝子の発現が精子幹細胞の自己複製制御に関わっていることが分かった。

    News Release 篠原 figA
    News Release 篠原 figB
    図の説明
    精子幹細胞/前駆細胞の増殖へのp21/p27の関与(仮説)
    A GDNFなど増殖促進因子はp21/p27の発現抑制を介して精子幹細胞/前駆細胞の増殖を抑制する。
    B p21欠損により前駆細胞の増殖が促進されるため、沢山の精子が作られるのではないかと考えられる。一方、p27欠損では幹細胞の自己複製活性は低下するが、前駆細胞の増殖は促進される。それにも関わらずp27 欠損でGermline transmission効率が低下する理由は分からないが、さらに分化の進んだ減数分裂過程などでもp27が精子形成効率もしくは精子の活性に関わるのではないかと考えられる。

    「発表雑誌」
    Proc.Natl.Acad.Sci.USA 3月23日付 電子版 (2010)
    タイトル:“Transmission distortion by loss of p21 or p27 cyclin-dependent kinase inhibitors following competitive spermatogonial transplantation”
    著者:Kanatsu-Shinohara M., Takashima,S. and Shinohara T.   >> 詳細

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