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    “成体メダカの卵巣で卵を継続的につくり出す幹細胞のゆりかごを発見”

     生き物にとって、自分たちの子孫を残していく事は最も基本的で重要な事柄です。多くの動物のオスでは、幹細胞が沢山の精子を一生涯にわたって作り続けることが明らかとなっています。一方で、メスが卵を作り出すメカニズムについては、不明な点が多く残されています。
     本研究ではSox9という元々オスの精巣で働くことが知られていた遺伝子を目印として、この遺伝子が働いている細胞が蛍光で光るようにしたメダカを作成し、生殖腺の観察を行いました(図1)。

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    すると、予想に反して、オスの精巣だけでなく、メスの卵巣の表面にも光る細胞が見つかり、卵巣の表面に今まで誰も知らなかった、精巣と似ているチューブ様のネットワーク構造があることを発見しました。さらに、このネットワーク状の構造の中に、卵のもとになる細胞が居ることを見つけました(図2)。

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     私たちは、この構造が「卵の幹細胞のゆりかご」ではないかと予想し、その過程を観察しました。卵のもとと思われる細胞にGFP(緑色蛍光タンパク質)で目印を付けました。すると目印を付けた細胞から、卵が継続的に作り出される過程が見いだされ、メスの卵巣にも卵の幹細胞が存在することが示されました(図3)。

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    卵の幹細胞の存在が明確に示されたのは、脊椎動物で初の成果です。
     メダカは春から秋にかけて毎日継続的に卵を産み続けることができるなど、「多産」であることが知られています。今回の成果は、卵を産み続けることが できる仕組みの謎を一つ明らかにしました。また、卵巣にも精巣と似た構造があることが判ったことから、性分化・性転換のしくみの理解も大きく進むと思われます。さらに、卵巣の中での幹細胞の居場所が特定されたことで、卵の幹細胞を取り出したり、操作したりする可能性がひらけ、育種分野などでの卵の幹細胞研究や応用が飛躍的に進むことが期待されます。


    「発表雑誌」
    Science. DOI: 10.1126/science.1185473 (2010)
    タイトル:"Identification of germline stem cells in the ovary of the teleost medaka."
    著者:S., Kobayashi, K., Nishimura, T., Higashijima, S. and Tanaka, M.  >> 詳細

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