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性転換魚における生殖腺の性的可塑性に関する研究

 多くの生物には性が存在し、雄または雌に分けられます。一般的に一度決定された性は変わることがないとされています。しかしながら、魚類の中にはその生涯において一度成熟した性から他方の性へと転換する性転換魚が存在します。このような性転換魚は生物の性的可塑性を研究する上で有用なモデルとされています。
 現在研究対象としているのは沖縄のサンゴ礁域に生息するベラ科のミツボシキュウセンという魚です。本種は社会環境の変化が引き金となり、雌から雄に性転換する雌性先熟魚です。本種の性転換では、生殖腺内の卵巣組織が退行していき、そこに新たに精巣組織が分化してきます(図1)。性転換の方向に違いこそあれ、多くの性転換魚ではこのような生殖腺組織の劇的な変化が起きているのです。しかしながら、このような組織学的変化がどのような細胞(細胞の性質)によって制御されているかは明らかになっていません。我々は性転換において、生殖腺を構築している細胞を追跡することにより生殖腺性転換を可能としている細胞の特定およびそれらの細胞の性質の理解を試みています。
 加えて現在は、次世代シーケンサーを利用し、性転換過程の生殖腺において発現しているmRNAの網羅的な発現解析を行い、生殖腺性転換の分子基盤および細胞の性質を司る分子基盤の解明も進めています。


図1ミツボシキュウセンの生殖腺性転換過程 (引用 Nozu et al., 2009)