プレスリリース:テントウムシの多様な斑紋を決定する遺伝子の特定に成功

当室の重信秀治特任准教授らは、基礎生物学研究所 進化発生研究部門の安藤俊哉助教と新美輝幸教授らのグループ、東京工業大学の伊藤武彦教授らのグループ、明治大学の矢野健太郎教授らのグループ、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授らのグループ、東京大学の鈴木穣教授らのグループと共同で、テントウムシの多様な斑紋を決定する遺伝子の特定に成功しました。


テントウムシの多様な斑紋を決定する遺伝子の特定に成功

自然科学研究機構 基礎生物学研究所
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所

基礎生物学研究所 進化発生研究部門の安藤俊哉助教と新美輝幸教授らの共同研究チームは、テントウムシの多様な翅の斑紋(模様)を決定する遺伝子の特定に成功しました。

ナミテントウの前翅には、同種でありながら200以上もの異なる斑紋が存在します。この斑紋の多様性は、遺伝の様式から、一つの遺伝子によってもたらされることが古くから知られていましたが、具体的な遺伝子の実体および斑紋形成メカニズムは全く不明でした。本共同研究チームは、ナミテントウのゲノム解読などを行い、斑紋のパターンを決定する遺伝子がパニア(pannier)と呼ばれる遺伝子であることを特定しました。テントウムシの斑紋は、主に黒色と赤色のパターンとして作られますが、この遺伝子は、前翅がつくられる過程の、蛹の中期のステージにおいて黒色色素形成領域で働き、黒色色素(メラニン)の合成を促すと同時に赤色色素(カロテノイド)の沈着を抑制する機能をもつことが明らかになりました。興味深いことに、たった1つの遺伝子の働きにより翅全体の斑紋パターンが決定される機能は、ナナホシテントウにおいても保存されていることが判明しました。

本研究成果はNature Communicationsに2018年9月21日にされました。

論文タイトル:Repeated inversions within a pannier intron drive diversification of intraspecific colour patterns of ladybird beetles

著者:Toshiya Ando, Takeshi Matsuda, Kumiko Goto, Kimiko Hara, Akinori Ito, Junya Hirata, Joichiro Yatomi, Rei Kajitani, Miki Okuno, Katsushi Yamaguchi, Masaaki Kobayashi, Tomoyuki Takano, Yohei Minakuchi, Masahide Seki, Yutaka Suzuki, Kentaro Yano, Takehiko Itoh, Shuji Shigenobu, Atsushi Toyoda, and Teruyuki Niimi

DOI:10.1038/s41467-018-06116-1

詳しくは以下のページをご覧ください。
http://www.nibb.ac.jp/press/2018/09/21.html

図:ナミテントウの多様な翅の斑紋