
木下 温子/Atsuko Kinoshita
東京都立大学大学院 理学研究科 生命科学専攻 助教
研究協力者:岡本 龍史(東京都立大学大学院 理学研究科 生命科学専攻 教授)
鎌本 直也(広島大学 統合生命科学研究科 特任研究員)
「植物の人工受精」を用いて、細胞レベルの極性や細胞間の極性の相互作用を検証する
多細胞生物の形態形成は,雌雄配偶子の融合によって生じた単一の受精卵を出発点として開始します。被子植物では,受精および胚発生の過程は組織の深部で母体組織と相互作用しながら進行するため,その観察や解析が困難でした。本研究班では,単離した卵細胞と精細胞を電気的に融合するイネin vitro受精系と受精卵培養技術を用い、本来組織内部で進行する胚発生を追跡することで,多細胞化の過程で細胞が極性を獲得し組織形成へと至る仕組みの解明を目指します。本実験系では,母体組織由来の外因性因子や力学的作用の影響を排除できるため,受精卵の内在性因子に起因する自律的な極性形成メカニズムの解明に寄与できると期待されます。また,他の研究班と連携し,隣接する細胞間の極性情報・相関の定量イメージング解析を行い,階層間をつなぐ複雑な極性化の理解を目指します。
参考文献
- Yilin Zhang, Daisuke Maruyama, Erika Toda, Atsuko Kinoshita, Takashi Okamoto, Nobutaka Mitsuda, Hironori Takasaki, Masaru Ohme Takagi. Transcriptome analyses uncover reliance of endosperm gene expression on Arabidopsis embryonic development. FEBS Letters. 2023
- Kasidit Rattanawong, Narumi Koiso, Erika Toda, Atsuko Kinoshita, Mari Tanaka, Hiroyuki Tsuji, Takashi Okamoto. Regulatory functions of ROS dynamics via glutathione metabolism and glutathione peroxidase activity in developing rice zygote. The Plant journal : for cell and molecular biology. 2021. 108. 4. 1097-1115