領域概要

植物や大型藻類は、環境に応じた表現型可塑性など、形態の柔軟性を示します。これは、移動できない生物が、変動する環境を生き抜く戦略の一環であると考えられます。しかし、柔軟性がどのような発生過程を経て生まれるかは明らかでありません。本領域では、多くの植物の発生過程では、細胞極性が一様に揃わないまま組織・器官が分化することに注目し、非一様な細胞極性が体軸に翻訳される過程の解明に挑みます。形態形成は細胞・組織・器官の各階層間の創発的相互作用により進行するため、単純な因果律によって現象を説明する従来の還元論的手法だけでは、本現象の理解は困難です。そこで、構成生物学的手法や理論生物学的手法を取り入れます。とくに、統計力学で知られるスピングラス理論を植物の発生に導入する前例のない試みにより、細胞極性の非一様性こそが、可塑的かつ多様な植物の形態形成の本質であることを提案します。