第16回 配偶子制御セミナー

iPS細胞のこれまでとこれから

講師  高橋 和利 博士
所属  京都大学 iPS細胞研究所 CiRA
日時  平成22年9月10日(金)16:20-18:00
場所  東京海洋大学 海洋科学部 白鷹館 講義室

講演の内容
 胚性幹 (ES) 細胞は胚盤胞期の受精卵から樹立される幹細胞である。もともと個体を形成する予定であった細胞に由来するため、あらゆる種類の細胞系譜への分化する能力 (分化多能性) と高い増殖能を備えている。1998年にヒト受精卵からES細胞が樹立されて以降、失った組織や細胞を補充する医療 (再生医療) のソースとして注目を浴びている。しかし、ES細胞は全ての患者にとって他人由来の細胞であるため移植後の拒絶反応が懸念される。また樹立時に受精卵を利用するという倫理的問題も常に付きまとう。これらの問題点がES細胞を用いた再生医療の実現に置いて高いハードルとなっていた。
 これらの問題を克服する可能性の一つとして、体細胞に既知因子を導入することによってES細胞に似た細胞を作製する技術が開発された。この技術は拒絶反応、ヒト胚の利用といったES細胞の抱える問題を克服しうる。しかし、移植医療に用いるためには作製された細胞が本当に安全なものであるのかを徹底的に検証する必要性がある。この技術によって作り出された多能性幹細胞はiPS細胞と呼ばれる。しかし、現状驚異的なスピードで研究が進展しており、iPS細胞といっても様々な種類が存在する。どのような方法を用いて、どのような細胞から作製するのが最も良いのか?この疑問に答えるべく、現在安全性の評価系構築を行っている。本発表ではiPS細胞が抱える課題とその解決を目指した取り組みについて紹介する。

参考文献
Takahashi, K., Tanabe, K., Ohnuki, M., Narita, M., Ichisaka, T., Tomoda, K., Yamanaka, S.. 2007.Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors. Cell 131, 861-872.

問い合わせ ;
東京海洋大学 海洋科学部 海洋生物資源学科 
吉崎悟朗 (goro@kaiyodai.ac.jp)
℡:03-5463-0558

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