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CSHL Germ Cells meeting に参加して

開催期間:平成22年10月5日 - 10月9日
開催場所:Cold Spring Harbor Laboratory, NY, U.S.A

横浜市立大学 医学部 微細形態学
博士課程1年 白川峰征

 2010年10月5日から10月9日までの5日間、ニューヨークのCold Spring Harbor Laboratoryで開催されたGerm Cells meetingに、新学術領域「配偶子幹細胞制御機構」のご支援をいただき、参加してきました。
 私は、今回初めて一人で海外の学会に行くということと、ポスター発表がうまく英語でできるかというプレッシャーから不安と緊張でいっぱいでした。しかしながら、いざ学会が始まってみると朝から晩まで非常に活発な議論が続き、次々と報告される新たな知見に不安な気持ちも忘れて聞き入ってしまいました。
 ミーティングでは、様々な動物種の生殖における研究成果が発表され、それぞれの種での異なった特徴や保存されている共通性などを比較しながら楽しむことができました。興味深い発表が数多くありましたが、その中でもNYU school of medicineのRuth Lehman博士の発表では、Drosophilaの卵幹細胞分化の際に、遺伝子発現抑制性のヒストン修飾を入れる酵素であるdLSD1とdSETDB1が細胞質から核内移行し、transposable elementやpiRNAの発現をエピジェネティックな修飾により直接制御すること、またそれらの分子のノックアウトでは卵幹細胞が正常に分化しないということを明らかにしていました。このことは、エピジェネティクスと幹細胞分化に着目している点で自分たちの研究とも関連しており非常に興味深く聴講しました。また、Drosophilaを用いたLive imagingの口頭発表が複数あり、Johns Hopkins University School of MedicineのErika Matunis博士は、Regeneration時にニッチを離れた分化した生殖細胞が再び幹細胞として機能しうる結果を示されました。これは本領域代表の吉田松生先生が既にサイエンス誌で報告されているマウス精巣における観察とも合致しており、その種を超えた共通性に驚くとともにLive imagingというツールの強力さを改めて感じました。
 ポスターセッションでは、精原幹細胞が分化する際のグローバルなエピジェネティックな特徴と、遺伝子改変マウスを用いたエピジェネティクス関連分子の幹細胞分化における機能解析について発表し、大変有意義な示唆を得ることができました。特に、Polycombの研究で有名なFriedrich Miescher InstituteのAntoine Peters博士が非常に興味を示され、今後の研究の展開についても重要な助言を頂けました。また、ポスターセッションではエピジェネティクスと生殖細胞を関連づけた研究成果が数多く発表されていました。自分の研究内容と近い分野のものでは、主にインプリンティングのDNAメチル化に関わっていることがこれまでに知られているDnmt3Lが、生後のマウス精原幹細胞においてDNAメチル化と無関係に、未分化性の維持に寄与しているというNational Taiwan UniversityのWendy Chenさんの研究結果が、自分たちのデータの一部と合致していることもあって、非常に印象的でした。
 また、David Page博士のラボの方と親しくさせていただき、帰国後も連絡をとりあって交流を持っております。海外のラボの様子や研究に対する姿勢を聞けることは非常に刺激になっています。
 最後になりましたが、今回のGerm Cells meetingへの参加を支援してくださり、非常に貴重な経験をさせていただいた新学術領域「配偶子幹細胞制御機構」の総括班の先生方に厚くお礼申しあげます。


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