原核細胞には核構造はないのであるが、視点を変えれば、核様体を細胞膜で包み込んでいる原核細胞それ自体が真核細胞の核に相当すると、とらえることもできる。この点においては、一部の下等真核生物で見られる核膜の消失を伴わない核分裂は、原核細胞の細胞分裂に非常に似ている。また核様体は、ヌクレーオソーム構造が見られないものの、染色体DNAは真核染色体のように10kbほどのドメインを取りながら折り畳まれ、細胞内に高度に凝縮している。この高次凝縮過程は、トポイソメラーゼやSMCタンパク質が担っており、この点では核様体の構築は真核細胞の染色体と同じである。原核細胞の核様体の研究は、核構造の進化的な広がりを考える上で特色があり、基本の分子基盤の展開研究といえる。これまで、私たちの研究室ではバクテリア染色体のセントロメアともいうべき染色体移動のシス配列migSを世界にさきがけて大腸菌に見出した。わずか25bpという配列ではあるが、この配列を含む染色体領域が複製し倍加すると、それぞれのDNAを細胞の両極へ方向性を持って移動させる活性を細胞内で示す。すでに、この配列に結合とするとタンパク質因子があることを予備実験で示している。またそれ以前にバクテリアコンデンシンMukBの発見やSeqAタンパクの局在を見いだしている。これら因子の蛍光標識観察もすでに行っているが、本研究では、位相差顕微鏡による無蛍光標識法による核様体動態観察方法と蛍光標識法したタンパク質の同時観察方法を駆使してさらに新しいイメージングによる研究を推進する。 |