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文部科学省科学研究費補助金「特定領域研究」細胞核ダイナミクス
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細胞核内部アーキテクチャーの分子構築とクロマチン機能制御メカニズム
しきり線
岡山大学 筒井 研(分担) 平成16年−20年度
 

DNAトポイソメラーゼIIのβアイソフォーム(トポIIβ)が、神経細胞の終末分化に伴い発現誘導される遺伝子の一部を制御していることを見いだして以来1,2、その制御機構を明らかにすべく計画を進めてきた。トポIIはDNAを二本鎖とも切断・再結合する間に、別の二本鎖DNAを通過させ、DNAの分子内/分子間にある捻れや絡まりを解消する酵素である。切断を受けるDNA鎖をG-segment、その間隙を通過するDNA鎖をT-segmentという。本研究で次のようなことが明らかになった3。トポIIβに依存して転写誘導を受ける遺伝子の一群(A1遺伝子)は神経機能に必須な細胞膜タンパク質(イオンチャンネルやレセプターなど)に強く偏っている。A1遺伝子は長くAT-richな遺伝子間領域(LAIR)に隣接する、長くAT-richな遺伝子(LA遺伝子)である確率が有意に高く、この特徴のみからトポIIβ依存性を予測することが可能であった。トポIIβの作用点(トポサイト)をゲノム上にマッピングすると、性格の異なる2種類のトポサイト(c1、c2)が存在していた。このうちAT-richな領域に多いc2トポサイトはG-segmentとT-segmentが遠く離れたゲノム領域に由来すると考えられ、II 型トポイソメラーゼが遠隔部位間の相互作用を修飾するという、全く新しい概念が浮上した(図a)。c2トポサイトはLA遺伝子であるA1遺伝子とそれに隣接したLAIRの中に濃縮されていることから、分化前の神経細胞では、A1遺伝子の転写は隣接するLAIRから抑制を受けており、トポIIβがc2部位に作用する結果生じるクロマチンの高次構造変化が転写の抑制を解除するというモデルを提出した(図b)。LAIRは最近報告されたLAD(lamina-associated domain)ともよく一致するので、トポIIβは核ラミナ周辺に局在する抑制された遺伝子の活性化マシナリーとしても候補となりうる。機能的に類似した遺伝子が特定のゲノム領域に集まっていて、それらを活性化する新たな遺伝子制御メカニズムの一端をトポIIβが担っていることが、初めて明らかになった。

図

 

発表論文リスト:

  1. Tsutsui K, Tsutsui KM, Sano K, Kikuchi A, Tokunaga A: Involvement of DNA topoisomerase IIβ in neuronal differentiation. J Biol Chem276, 5769-5778, 2001.
  2. Tsutsui KM, Tsutsui K, Hosoya O, Sano K, Tokunaga A: Immunohistochemical analyses of DNA topoisomerase II isoforms in developing rat cerebellum. J Comp Neurol431, 228-239, 2001
  3. Sano K, Miyaji-Yamaguchi M, Tsutsui KM, Tsutsui K: Topoisomerase IIβ activates a subset of neuronal genes that are repressed in AT-rich genomic environment. PLoS ONE 3(12), e4103(1-13), 2008
         
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