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文部科学省科学研究費補助金「特定領域研究」細胞核ダイナミクス
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初期胚発生における核ダイナミクスのイメージング
平成１７−１８年度
生殖細胞系列における核内構造変化と核のリプログラミングについて
平成１９−２０年度
しきり線
筑波大学生命環境科学　山縣一夫
 
　生殖細胞系列においては、配偶子形成過程から受精を経て初期胚発生に至るまでの間に核内構造のダイナミックな変化が見られる。正常な胚・個体発生のためにはこれら一連の過程が厳密に制御される必要があり、事実、生殖系列をバイパスする体細胞クローン胚では制御に破綻が生じ、そのことが発生異常の原因と考えられている。本研究では生殖細胞系列における核内構造やDNAメチル化状態などのエピジェネティック変化をライブセルイメージング技術により動的に可視化し、それらをクローン胚と比較することで、核のリプログラミングの発生における重要性と分子メカニズムに関して新しい知見を得ることを目的とした。平成１７~１８年度では、初期胚のライブセルイメージング技術の確立を目指して、mRNAのin vitro合成用プラスミドの開発やインジェクション法の検討、検出用の顕微鏡システムの開発などを行った。また、メチル化DNAを特異的に検出する蛍光プローブを作製し、通常胚やクローン胚におけるグローバルなDNAメチル化状態の変化についてイメージングを行った。平成１９年度では個体発生に影響を与えずに長時間の４次元蛍光観察ができる顕微鏡システムを開発した（図）。これにより、初期胚で見られた現象とその胚の個体発生への影響を直接結びつけることがはじめて可能になった。現在、この実験系を用いて、実際に個体発生可能なクローン胚を遡及的に見出す試みを行っており、そこで得られた知見を積み重ねることで、近い将来リプログラミングの実体に迫れるものと考えている。

図1

 

発表論文リスト（*責任著者）：

  1. Yamagata, K.*, Suetsugu, R., and Wakayama, T. Long-term, six-dimensional live-cell imaging for the mouse preimplantation embryo that does not affect full-term development. J. Reprod. Dev. In press.
  2. Hara, Y., Yamagata, K.*, Oguchi, K. and Baba, T. Nuclear localization of profilin III-ArpM1 complex in mouse spermiogenesis. FEBS Lett.582, 2998-3004, (2008).
  3. Yamagata, K., Yamazaki, T., Miki, H., Ogonuki, N., Inoue, K., Ogura, A., and Baba, T.* Centromeric DNA hypomethylation as an epigenetic signature discriminates between germ and somatic cell lineages, Dev. Biol.,312, 419-426, (2007)
  4. Yamazaki, T., Kobayakawa, S., Yamagata, K., Abe, K., and Baba, T.* Molecular dynamics of heterochromatin protein 1beta, HP1beta, during mouse preimplantation development, J. Reprod. Dev.,53, 1035-1041, (2007)
  5. Yamazaki, T., Yamagata, K. (co-first author), and Baba, T.* Time-lapse and retrospective analysis of DNA methylation in mouse preimplantation embryos by live cell imaging, Dev. Biol.,304, 409-419, (2007)
  6. Yamagata, K.*, Yamazaki, T., Yamashita, M., Hara, Y., Ogonuki, N., and Ogura, A. Noninvasive visualization of molecular events in mammalian zygote.Genesis, 43, 71-79, (2005)

総説および著書

  1. Yamagata, K.* Capturing Epigenetic Dynamics During Pre-implantation Development Using Live Cell Imaging. J. Biochem.143, 279-286. (2008)
  2. 山縣一夫*「顕微鏡なるほどQ&A」、6章「観察（応用編）」羊土社、2008
  3. 山縣一夫*、山崎大賀、馬場忠、「ライブセルイメージングによる初期胚エピジェネティクス変化のダイナミクス解析」、蛋白質核酸酵素増刊号、２００７年１２月号、Vol.52 No.16、「生殖細胞の発生・エピジェネティクスと再プログラム化」小倉淳郎・佐々木裕之・仲野徹・松居靖久・中辻憲夫　編、２２１６−２
　 　 　 　 　
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