未分化細胞の核はサイズが大きく物理的可塑性が高いなどの体細胞の核とは異なる構造的特徴をもつ。本研究は、核膜の構成分子やクロマチン構造が体細胞とは異なる卵や初期胚における核の構造構築および機能制御のシステムを明らかにすることを目指している。特に、ツメガエル初期胚ではBタイプラミンの多くが体細胞と異なる修飾状態で蓄積されていることに着目して、初期胚の核形成・核構造維持・核や細胞機能の制御に果たすラミンBの役割を、卵抽出液の核再構成系を用いて明らかにしたい。これまでの解析から、ツメガエルの初期胚では体細胞とは異なり、LIIIとB1の2種類のBタイプラミンのみが発現し(卵での存在比、LIII:B1 =13 : 1)、これらのほとんどが膜に結合していないこと、さらに、初期胚では、核膜とラミンBやクロマチンを媒介する核内膜蛋白質の発現レベルが低いことが判明した。これら核膜構成分子の体細胞とは異なる存在様式が、初期胚の核の構造・機能的特性をもたらす要因の一つと考えられる。また、特異抗体による核膜分子の機能阻害や免疫除去、さらに卵抽出液での翻訳などの手法を用いた解析から、初期胚の核形成におけるラミンB、LIIIとB1の役割が異なること、初期胚型の核-クロマチン構造構築には、核内膜蛋白質の存在様式が重要であることなどが示されている。
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