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文部科学省科学研究費補助金「特定領域研究」細胞核ダイナミクス
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バクテリア核様体の動的形態変化を司る因子と機能領域の時空間解析
しきり線
国立遺伝学研究所系統生物研究センター 仁木 宏典 平成17−18年度
 

 原核細胞では染色体DNAが膜構造に包まれておらず、このため真の核とは見なされず、細胞内の染色体DNAの高次構造体は「核様体」と呼ばれる。そして、むしろ核様体は、凝縮した染色体に近い。この核様体は原核細胞内で、規則的な配置を取っていることが知られており、真核細胞の染色体が同じく規則的な核内配置を取る点で類似している。このように一見異なっているように思われるが、原核細胞の核様体の構築やその配置は、真核細胞の核内の染色体の構築やその配置と共通する分子基盤があると考えられる。この研究では、バクテリア核様体の動的形態変化を司る因子であるバクテリアコンデンシンMukB、新生DNA鎖の凝集因子SeqA、バクテリアセントロメアmigSとその結合因子らが核様体の構築に関わる際の分子機能の解明をめざした。

 まず、全反射蛍光顕微鏡を使うことでゼラチンに包埋した大腸菌のGFP標識タンパク質を高いS/N比のもとで観察することが可能となり、核様体とSeqA、MukBの動態を同時に観察した。核様体の分離と共にMukBが移動し、新規にできつつある核様体の中心部にMukBが局在していた。核様体の形成の中心の一つ、MukBであると考えられる。他方、プラスミド分配において、核様体の関与は明らかになっておらず、むしろ、無関係であることが示唆する結果を得ていた。しかし、P1プラスミドについて調べてみると核様体にプラスミド分配を司さどるParAタンパク質が分布していた。核様体をマトリックスとしてParAタンパク質濃度勾配を形成し、この勾配に応じてプラスミドの分配が制御されているものと考えられる。また、大腸菌の遺伝子破壊株のコレクションから核様体の形成や分離異常を示すものを探索した。その中から、細胞形態が桿状から球状に変わったものを見いだし、 この形態形成の変異が、内部の核様体の形態をにも大きく影響していた。この遺伝子rodZそのものは細胞長を制御する新規細胞骨格性因子であることを見いだした。これまで、細胞膜と核様体の関係については示唆する結果は発表されているものの、細胞形態が核様体の形成に影響するものはこれまで知られていない。RodZにはHTHモチーフが存在し、DNAとの結合も予想される。現在のさらに分子機能について詳細な研究をすすめている。

生きた細胞内での大腸菌の核様体とMukB-GFPの細胞内局在

 

発表論文リスト:

  1. Shiomi D, Sakai M, Niki H (2008). Determination of bacterial rod shape by a novel cytoskeletal membrane protein. EMBO J27, 3081-3091.
  2. Hatano, T., Yamaichi, Y., and Niki, H. (2007). Oscillating focus of SopA associated with filamentous structure guides partitioning of F plasmid. Mol. Microbiol.64, 1198-1213
  3. Cui T, Moro-oka N, Ohsumi K, Kodama K, Ohshima T, Ogasawara N, Mori H, Wanner B, Niki H, Horiuchi T. (2007) Escherichia coli with a linear genome. EMBO Rep.8, 181-187.
         
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