シロイヌナズナのペルオキシソーム形成変異体の解析

 緑色蛍光タンパク質 (GFP; Green fluorescent protein) でペルオキシソームが可視化されている形質転換シロイヌナズナを親株として、GFPの蛍光パターンが異常になったaberrant peroxisome morphology (apem) 変異体を多数単離し、その原因遺伝子の同定とコードされるタンパク質の機能解析を行っています (図6)。多くのapem変異体では、種子の発芽や発芽後の成長が抑制されます。このことは、ペルオキシソームの機能や形成が個体の維持に重要であることを示唆しています。

 これまでに、APEM1遺伝子がDynamin-related protein 3A (DRP3A) というタンパク質をコードして、ペルオキシソームとミトコンドリアの分裂を制御していること、APEM2遺伝子とAPEM4遺伝子はPEX13とPEX12をコードし、ペルオキシソーム膜上に存在するタンパク質輸送装置を形成していること、APEM3遺伝子はMitochondrial carrier familyに属するタンパク質をコードしてNADPやCoAを輸送していることを明らかにしています。また、APEM9は植物に特異的なタンパク質であり、ペルオキシソームタンパク質レセプターのリサイクルに関与していること、APEM10遺伝子はLon protease 2をコードしてペルオキシソームタンパク質の品質管理、そしてオートファジーと連携して、ペルオキシソームそのものの品質管理にも関わっていることが分かってきました。

 また、ペルオキシソームと葉緑体の相互作用が異常になったperoxisome unusual positioning (peup) 変異体も多数単離し、そのいくつかがAutophagy-related (ATG) 因子の欠損によるものであることを明らかにしています。今後、他のapem変異体やpeup変異体の解析を進め、新たなペルオキシソーム因子の同定と、それらの機能を明らかにしていく予定です。





図 6. apem変異体の表現型

apem (aberrant peroxisome morphology)変異体は、親株 (GFP-PTS1) とは異なる蛍光パターン示す変異体として単離された。この図にあるように、apem 変異体では、ペルオキシソームの形や大きさが変わったり、ペルオキシソームへのタンパク質輸送が異常となり蛍光がサイトソルで観察される。

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