ペルオキシソームの形成機構

 ペルオキシソームは、分裂して増殖するという点ではミトコンドリアやプラスチドと似ていますが、一方で、複膜でなく単膜で囲まれている点や、オルガネラゲノムをもたない点は、ミトコンドリアやプラスチドと異なっています。オルガネラゲノムをもたないため、ペルオキシソームを構成しているタンパク質は全て核ゲノムにコードされています。ペルオキシソーム内部に輸送されるタンパク質の多くは、ペルオキシソーム輸送配列 (PTS; Peroxisome targeting signal) が存在します。PTSには、タンパク質のC末端に存在するPTS1とN末端に存在するPTS2があります (図4)。このPTSを蛍光タンパク質に融合させることでペルオキシソームを可視化させることが可能となり (図4)、ペルオキシソーム動態についての理解が飛躍的に深まりました。





図 4. ペルオキシソームタンパク質の輸送機構

多くのマトリクスタンパク質には、ペルオキシソーム輸送シグナルが存在する。PTSには、タンパク質のC末に存在するPTS1と、N末に存在するPTS2があり、PTS2はペルオキシソームへ輸送後、切断を受ける。PTSをGFPにつなげることでペルオキシソームを粒状の構造体として可視化できる。PTS2の中の x は任意のアミノ酸。

 ペルオキシソーム形成に関わる因子は、ペルオキシン (PEX; Peroxin) と呼ばれます (図5)。PEXは、その機能に応じて3つのグループに分けられます。(1) マトリクスタンパク質 (ペルオキシソーム内のタンパク質) の輸送に関わるもの、(2) 膜タンパク質の輸送に関わるもの、(3) 分裂や増殖に関わるものです。現在、30種類以上のPEX遺伝子が、動物、植物、酵母のゲノムに存在することが報告されていますが、その詳細な機能については、一部のPEXを除いては明らかにされていません。

図 5. ペルオキシソーム形成因子

PEXは、動植物、酵母などから、現在、30種類以上が同定されている。それらの機能は、欠損体の表現型から、(1) マトリクスタンパク質 (ペルオキシソーム内のタンパク質) の輸送に関わるもの、(2) 膜タンパク質の輸送に関わるもの、(3) 分裂や増殖に関わるものに分類できる。図に示してあるのは、植物で同定されたPEX。

研究概要リストへ!