ペルオキシソームとは?

 ペルオキシソームは、動植物や酵母など真核細胞に存在するオルガネラです。直径0.5~1.5 µmの楕円形あるいは球形の構造をとり、ミトコンドリアやプラスチドのような複膜でなく単膜で囲まれています (図1)。教科書には、マイクロボディ、あるいはミクロボディという名前で記載されることもありましたが、このオルガネラがペルオキシダーゼ活性を有するため、機能的な意味合いからペルオキシソームと呼ばれることが多くなりました。



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図 1. シロイヌナズナ緑葉の電子顕微鏡写真

 ペルオキシソームには様々な機能が存在します。脂肪酸代謝と過酸化水素の生成、および生成した過酸化水素の消去系は全ての生物種のペルオキシソームに見いだされています。これら共通の機能に加え、生物種に特異的な機能が存在します。動物での胆汁酸やコレステロールの生合成、酵母でのアルコールの代謝などです。高等植物では、光呼吸、ジャスモン酸やオーキシンの生合成にペルオキシソームが関与しています。他にも、ポリアミンの異化作用、分岐アミノ酸の合成にもペルオキシソームが関与していることが報告されています。ゲノム情報によるペルオキシソーム遺伝子の同定や、単離したペルオキシソームを用いたプロテオーム解析などから、まだ明らかにされていない機能が存在することが予測されています。

 植物ペルオキシソームは、その機能により脂肪性種子植物の子葉や胚乳の貯蔵組織に存在するグリオキシソーム、緑化子葉や本葉などの光合成組織にみられる緑葉ペルオキシソーム、および茎、根などに存在する特殊化していないペルオキシソームに分類されます。グリオキシソームは、脂肪酸β酸化系およびグリオキシル酸回路をもち、オイルボディに蓄えられている貯蔵脂肪から代謝された脂肪酸をコハク酸へ変換を司っています (図2)。緑葉ペルオキシソームは葉緑体やミトコンドリアと協調して光呼吸系の一部を担っています (図3)。根、花、茎など他の組織には、グリオキシソームや緑葉ペルオキシソームとは異なるペルオキシソームが存在しますが、その生理的機能については、根にポリアミンの異化作用が存在する例を除いて明らかにはされていません。

図 2. ペルオキシソームの脂肪酸代謝経路

発芽直後の植物体はすぐに光合成をすることができない。そのため、種子に蓄えられた貯蔵物質を分解することにより成長に必要なエネルギーを獲得する。カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン、シロイヌナズナなどの脂肪性種子植物は、貯蔵物質として脂肪をオイルボディに蓄える。この貯蔵脂肪は、リパーゼの働きにより脂肪酸となりグリオキソームへと輸送される。グリオキソーム内では、まずβ酸化系によりアセチルCoAが生成され、このアセチルCoAはグリオキシル酸回路の基質となる。β酸化系が一回りすると炭素数が2つ短くなった脂肪酸が生成されるが、この脂肪酸は再びβ酸化系に入る。グリオキシル酸回路を構成する酵素群は全てグリオキシソーム内に存在するのではなく、アコニターゼはサイトソルに存在する。

 

図 3. 緑葉における光呼吸

光呼吸は、光依存的な酸素吸収と二酸化炭素放出現象であり、緑葉ペルオキシソームは重要な機能の一つである。この反応系は、葉緑体、緑葉ペルオキシソーム、ミトコンドリアの3つのオルガネラの協調的な働きにより機能し、グリコール酸経路と呼ばれる。この経路は RubisCO の酸素化反応により生じたグリコール酸を再び回収するためのものである。この光呼吸系に異常をきたした変異体がいくつか単離されており、それらは高CO2条件では普通に生育するが、通常の大気中では成長抑制を受ける。

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