すばる望遠鏡から顕微鏡へ:
高解像・高感度観察を可能にする次世代補償光学系に向けて
開催時期 : 2014年3月24日(月)~25日(火)
開催場所 : 国立天文台 中央棟講義室 東京都三鷹市大沢2−21−1
主催 : 自然科学研究機構 若手研究者による分野間連携研究プロジェクト
「天体観測に用いる補償光学を応用した植物細胞の新規4Dライブイメージング手法の確立」
共催 : 国立天文台・ハワイ観測所 / 基礎生物学研究所・光学解析室
補償光学は、観測対象と計測装置との間に存在する不均一な媒質によって乱された光の波面(同位相面)を補正し、回折限界に迫る高い分解能を得る技術であり、地上の光赤外線望遠鏡を用いた天体観測においてその有効性が示されてきた。わが国においては、国立天文台・ハワイ観測所のすばる望遠鏡に設置された188素子レーザーガイド星補償光学系によって、1 ㎛より長い波長で回折限界に近い分解能を達成している。また、上空90 kmの中間圏に存在するナトリウム層をレーザーで励起・発光させ、補償光学に必要なガイド星を人工的に作り、補償光学で観測可能な天域の拡大に成功している。現在は、太陽系外惑星探査用高コントラスト補償光学系、多天体補償光学系実証装置 (RAVEN) 、超広視野地表層補償光学系 (ULTIMATE-SUBARU) など、さらに高感度、広視野の補償光学系が開発されつつある。
その一方で、補償光学は地上望遠鏡だけでなく、媒質の不均一性によって結像性能が劣化するあらゆる測定光学系に応用できる可能性がある。例えば、生きた細胞の顕微鏡観察が挙げられる。細胞内外には屈折率の異なる多様な構造体が混在するため、生体組織の奥深くを観察しようとすると、像が劣化してしまう。そうした屈折率分布の違いによる像劣化を補償光学によって補正をすると、複雑かつ多様な生体組織の内部でも鮮明な像を得られることが期待できる。我々は、国立天文台と基礎生物学研究所との分野間連携プロジェクトのもと、顕微鏡に合った補償光学系の研究開発を進め、新規に補償光学蛍光顕微鏡を組み上げ、世界最高性能レベルの鮮明な蛍光像・明視野像を得ることに成功してきた。この最先端の成果は、補償光学顕微鏡が今後発展していくための基礎となるとともに、以前からいわれてきた補償光学の他の光学機器への優れた汎用性を具体的に実証した一例である。
このような状況を鑑みて上記シンポジウムの開催を企画します。最前線の補償光学に携わる研究者、顕微鏡を用いた最先端の生物学研究に携わる研究者、補償光学を応用できる可能性がある研究領域において第一線で活躍中の研究者を招待し、それぞれ最新の研究トピックスを紹介していただきます。また、シンポジウムの最後に、補償光学を多様な光機器に応用する可能性、補償光学研究そのものの今後の発展について、参加者全員で討論・議論する予定です。本シンポジウムをきっかけにして、多様な研究領域の専門家が補償光学の原理と応用、それに必須な先端技術、そこから飛躍するサイエンスについて、様々な意見を交換し、活発な議論が広がることを目指しています。さらに、補償光学を導入することによって、いままでの概念を一新するような光学機器を発案し、それを駆使して、これまで不可能であった科学的命題への挑戦に先鞭をつけることができると期待しています。
【プログラム】
2014年3月24日(月)
12:20 ~ 13:00 受付
13:00 ~ 13:10 開会の挨拶 高見 英樹 (国立天文台)
セッション1 座長:秋山 正幸 (東北大学)
13:10 ~ 13:35 早野 裕 (国立天文台)
「補償光学システム入門」
13:35 ~ 14:00 大屋 真 (国立天文台)
「次世代天文補償光学装置の方向性と顕微鏡応用への展望」
14:00 ~ 14:25 村田 隆 (基礎生物学研究所)
「蛍光イメージング入門」
14:25 ~ 14:50 玉田 洋介 (基礎生物学研究所)
「補償光学顕微鏡試作機の開発とそれを用いた高解像度観察の実際」
14:50 ~ 15:05 休憩
セッション2 座長:村田 隆 (基礎生物学研究所)
15:05 ~ 15:35 平岡 泰 (大阪大学)
「生物学が補償光学に期待するもの」
15:35 ~ 16:05 岡田 康志 (理化学研究所・生命システム研究センター)
「超解像顕微鏡法の現状と課題~補償光学への期待」
16:05 ~ 16:35 竹内 秀明 (東京大学)
「メダカ社会脳の神経基盤の解明~脳科学において補償光学に期待するもの~」
16:35 ~ 16:50 休憩
セッション3 座長:早野 裕 (国立天文台)
16:50 ~ 17:20 秋山 正幸 (東北大学)
「広視野多天体補償光学の概要と実際」
17:20 ~ 17:50 村上 尚史 (北海道大学)
「地球型系外惑星の直接検出を目指した高コントラスト補償光学技術」
17:50 ~ 18:20 宇治 彰人 (京都大学)
「補償光学走査型レーザー検眼鏡を用いた高解像度網膜イメージング」
18:20 ~ 18:50 ポスターセッション ショートトーク(各3分)
18:50 ~ 20:50 ポスターセッション および 交流会
2014年3月25日(火)
セッション4 座長:野中 茂紀 (基礎生物学研究所)
9:00 ~ 9:30 平瀬 肇 (理化学研究所・脳科学総合研究センター)
「生体脳蛍光イメージングで何を欲するのか-神経・グリア研究の現場から」
9:30 ~ 10:00 亀井 保博 (基礎生物学研究所)
「生体内単一細胞に遺伝子発現を誘導する顕微鏡技術(IR-LEGO)の原理と応用」
セッション5 座長:大屋 真 (国立天文台)
10:00 ~ 10:30 橋本 信幸 (シチズン)
「液晶アクティブ光学素子と補償光学への応用」
10:30 ~ 11:00 服部 雅之 (基礎生物学研究所)
「高精度・高感度波面センサーの研究と望遠鏡・顕微鏡への応用」
11:00 ~ 11:10 休憩
総合討論 座長:玉田 洋介 (基礎生物学研究所)
11:10 ~ 11:50 総合討論 ファシリテーター 早野 裕 (国立天文台)
11:50 ~ 12:00 閉会の挨拶 亀井 保博 (基礎生物学研究所)
◆ 世話人国立天文台・技術主幹 高見 英樹 |
◆ 参加登録参加登録は〆切ました。もし参加を希望される場合は、下記アドレスまでご連絡ください。 |
◆ アクセス国立天文台 中央棟講義室 |
◆ 事務局連絡先aosympo@nibb.ac.jp |