
2014年 11月 22日(土)12:00 ~ 17:00 プログラム
東京国際フォーラムB7 アクセス
研究者になりたい!最新の研究成果を知りたい!研究者と交流したい!そんな方々におすすめのイベントです
沢山のご来場ありがとうございました。本イベントは終了いたしました。








当日、ニコニコ生放送において講演についての質問を受付いたしました。その回答を掲載します
【藤森教授への質問1】
「細胞分裂時に細胞同士がどのような連絡をとっているのか、調べる方法は、そのうち見つかるでしょうか?」
【藤森教授の回答】
既にどのように連絡をとりあっているかを調べる方法はあります。細胞の膜状にある受容体を介して、細胞の外や、他の細胞の膜上のタンパク質などから情報を入力します。さらにこれらの情報が細胞の中で伝達されて、最終的には核に到達し、それぞれの標的の遺伝子の発現を誘導します。細胞の外から、細胞の中を介した情報伝達の実体はタンパク質であり、抗体などを使って、それらを調べることができます。更に、遺伝子発現は様々な方法で調べることができます。
【藤森教授への質問2】
「初期胚における正中線の予測についてもっと詳しく+その違いから何が起こるんでしょうか?」
【藤森教授の回答】
卵が分裂すると、2細胞期になります。カエルの場合、分裂した後にできた2つの細胞の境界が、将来の体の正中線に相当するということが知られています。つまり、2つの細胞のうち一つが体の右側半分、もう一つの細胞が体の左側半分になるということです。このことから、受精した卵で将来の体の軸が予想できることになります。つまり、受精卵に既に将来の体の軸に関わる情報が入っていると考えることができます。一方でマウスの卵の場合、2細胞期の一つの細胞の子孫が体のどこかに偏るということがなく、2つの細胞のそれぞれからの子孫細胞は体の中でほぼランダムに混ざり合うようになります。この事は、マウスの卵には、将来の体の軸に関わる情報がないことを意味しています。この様な差がどうして有るかは不明ですが、この様なことも含んでマウスの発生が調節性に富むといわれます。
【藤森教授への質問3】
「50年後にはどんなことがわかっていて、どんなことがわかっていないでしょうか?」
【藤森教授の回答】
これまでの50年の間に分かるようになったことも非常に膨大です。更に加速して、様々なことが発見されるでしょうから、今から50年先を予測することは非常に難しいです。従って、答えは分からないです。
【藤森教授への質問4】
「高校時代どれくらい勉強しましたか。勉強以外に何かしてましたか?」
【藤森教授の回答】
それなりに勉強しました。ただ、部活動や学校の文化祭、クラスマッチなどのイベントにも積極的に参加しました。それらは非常に楽しく、多くの時間をかけました。部活は、物理研究会でした。応用物理班で太陽炉の設計から作製までしました。他にも多くの工作を日頃からしていました。
【阿部教授への質問1】
「マラリアって大丈夫だったの?」
【阿部教授の回答】
体の具合がおかしいと思ったのは、一日の調査が終わって、夕方川で水浴びをしていたときです。いつものようにパンツを着たまま体を洗い、手桶で水をかけてせっけんを洗い流した時に、体にあたる水を「痛い」と感じました。おかしいなとおもながらタオルで体をふき、腰にバスタオルを巻いて新しいパンツを両手に持って履き替えようとしたときに(想像してください)、手が震えていてなかなかパンツが履けなかったことを思い出します。そのあと急に頭がボーとして、寒気が経験したことのないほどひどくなり、あわてて持ち歩いているマラリアの薬(クロロキン)を飲んで、寝床に横になりました。持ってきた衣類を着れるだけ着こんでも、寒くてたまらず、がたがた震えていました。
マラリアの中にはクロロキン耐性があるものもあるそうですが、運よく、薬が劇的に効いたようです。いつの間にか眠っていて、朝目を覚ました時には熱はなく、むしろ爽快感すらありました。その後デング熱にもかかりましたが、3日間熱が下がらず、下がった後も1か月ほど体調不良が続いたのと大きく違っていました。致死率の高い熱帯熱マラリアでもなかったようですし、体内にマラリア原虫が残って再発することもありませんでした。調査には、マラリアの薬を何種類か必ず、お守りのように持って行ってます。
【阿部教授への質問2】
「熱帯雨林を部分・部分、帯状に残しつつ、換金樹木を植えていくなど、環境と開発の共存を図る開発手法は行なわれるでしょうか?」
【阿部教授の回答】
熱帯雨林を全面的に換金作物等に転換するのではなく、部分的に残したりすることは、とりわけ生物多様性の保全の点で、大切なことです。残した熱帯雨林が、生物の「逃げ場」になるからです。河川の両側を帯状に残すことは、生物多様性の保全と水文環境の維持の両方の点で効果的だと考えられています。さらに部分的に残した熱帯雨林をつなげてゆくことも大切です。「逃げ場」を孤立させるのでなく相互に行き来できるようにすることで、保全をより効果的なものにします。「緑の回廊」と呼ばれ、オランウータンなどの大型の哺乳動物にとっては重要なことです。
土地利用を多様にすることも、一つの方策です。たとえば一面アブラヤシのプランテーションとするのでなく、果樹やそのほかの樹木作物を組み合わせて、モザイク的な土地利用を目指します。
熱帯林において、開発と環境を両立させる方法(2012年に開催された国連の開発と環境に関する会議 Rio+20では、Green Economyという考えが提唱されました)は他にもあり(アグロフォーレストリーもその一つでしょうね)、あちこちで試みられてます。ただ現実にはまだ限定的であり、大きな広がりをみせているとは言えません。最大の理由は、生産者にとって大規模・単一栽培のほうが、コストが低く生産効率は高く、価格などの点で国際競争力を得ることができ「経済的」に有利だからです。根本的な意識や考えを変える必要があります。われわれ消費者が意識を変えることで、熱帯林での生産のありかたを変えることもできます。これまでのように良いものをできるだけ安くではなく、環境に配慮した方法で生産されたものを良いものとして選択的に購入するということです。さまざまな商品のなかで、環境に配慮した方法で生産されたものを「認証」する制度は、消費者の側から生産方法を変えてゆこうとする動きの一つです。
【阿部教授への質問3】
「ジャングルに旅行しにいくことは出来るんですか?」
【阿部教授の回答】
今は気軽に熱帯林に行くことができるようになりました。僕が最初に行った三十年前とはずいぶん違ってます。エコ・ツアーと呼ばれてますが専門に取り扱っている旅行業者もあります。マレーシア半島部の最古の熱帯林と言われているタマン・ネガラ国立公園、ボルネオ島のサバ州・サラワク州のいくつかの国立公園などは、比較的簡単に行ける熱帯林です。ほかにもインドネシア、タイでそれぞれ特徴的な熱帯林を見ることができます。マングローブへのツアーも少なからずあります。
あらかじめ言っておきますが、野生の動物はそう簡単に見ることはできません(オランウータンを森に離す訓練をしている場所があり、そこなら比較的簡単に見ることはできます)。またそんなに「楽しい」ものではありません。それでも熱帯林の中に踏みいることは貴重な経験だと思います。残された熱帯林を見に行くときに、途中の風景にも注意しておいてください。そして、かつては、その大部分が熱帯林に覆われていたことを想像してみてください。この30年で、熱帯林は急速に消失しました。その結果何を得て、何を失ったか考えてみることは、「人間」について思いを巡らせるうえで、重要なヒントになると思います。