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  • 吉崎悟朗

    研究概要 小林悟

    研究目的

     現在までに配偶子幹細胞(GSC)に関する詳細な解析が行われている脊椎動物はマウス等の哺乳類のみであり、他の多くの脊椎動物におけるGSCの研究は組織学的な解析に留まっている。そこで、本研究では、魚類で唯一移植実験によりGSCの同定が可能になっているニジマスをモデルに用いて魚類のGSC/ニッチ・システムを明らかにすることを目指す。  魚類のGSCの存在は、長年予想されてきたものの、その存在の機能的証明は全く成されてこなかった。申請者は、さきがけ研究21(H14-17)において魚類で初めて生殖細胞の移植実験系を構築し、この実験から魚類精巣内に分化能と自己複製能を兼ね備えた幹細胞集団が存在すること、さらにこれらのGSCは性的可塑性を有していることを初めて明らかにした(Okutsu et al., PNAS 2006)。しかし、この幹細胞集団の同定は移植実験後にretrospectiveに可能であるものの、精巣内でどの細胞が幹細胞として振る舞っているかをprospectiveに同定することは全く可能になっていない。当然、これらの幹細胞を支持するニッチ・システムについても全く明らかになっていないのが現状である。 そこで、本研究では魚類におけるGSCを機能的・形態的に同定するとともに、その分子マーカーの探索を行い、これらの道具を駆使することでGSCの季節的消長、さらには性差を明らかにする。さらに、GSCと唯一直接接触している細胞であるセルトリ細胞を、他の分化段階の生殖細胞と接触している他のセルトリ細胞と判別するための技法開発を目指す。これらの実験により同定されたGSC/セルトリ細胞を共培養系で培養した後に移植実験に供し、用いたセルトリ細胞がGSCのstemnessに及ぼす影響を明らかにする。



    研究内容

     本研究では、GSCを含むことが予想される未分化精原細胞のみがGFP蛍光を発し、ニッチ形成に重要な役割を果たすことが予想されるセルトリ細胞が特異的にDsRed蛍光を発する遺伝子導入ニジマスをモデルに用いる。具体的には、①詳細な移植実験によりGSCを機能的に同定し、これらの細胞をprospectiveに同定可能な分子マーカーを探索する。これには、GSCを高濃度で含むと予想される集団と、その他の精原細胞間でのマイクロアレイ解析を用いる。さらに、②これらのGSCの挙動を基に、GSCの維持、増殖に機能特化したセルトリ細胞、すなわちGSCのニッチ形成に貢献していることが予想されるセルトリ細胞を形態的に同定する。これらのセルトリ細胞を同定するために、本細胞で特異的に発現しているマーカー分子の探索をGSCマーカーの探索と同様のアプローチで行う。続いて、ここまでの研究で得られた情報を用いて単離したGSCおよびセルトリ細胞を用いて、③GSCのin vitro培養実験と、それに続くin vivoへの移植実験を組み合わせることで、単離したセルトリ細胞のニッチ形成能を明らかにする。また、ニジマスは明瞭な季節繁殖性を有するため、④これらのGSCとニッチ細胞の出現パターンの季節変化を、その数と生殖腺内における3次元的な位置に注目して明らかにする。なお④の解析は精巣のみならず⑤卵巣においても行うことで、哺乳動物では解析不可能な、雌性生殖腺におけるGSCおよびニッチ形成機構の解明にも迫る。