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  • 吉田松生

    研究概要 小林悟

    研究目的

     本研究の最終目的は、マウスの配偶子幹細胞(GSC)である精子形成幹細胞と、それを制御するニッチ細胞およびニッチの場の解明である。申請者は、パルス標識実験を用いて、精巣組織を破壊せずにGSCを同定することに世界で初めて成功した。そして、形態的に「未分化型精原細胞:Aundiff」と記載される少数の細胞のうち、GSCは更にそのごく一部であること、多くのAundiffが幹細胞としての潜在能力を持ちながら自己複製しない「ポテンシャル幹細胞」であることを発見した(Dev. Cell 2007)。しかし、精巣中でGSCをprospectiveに同定するには至っていない。また、この現状での最善の策として、Aundiffの精巣内の挙動を解析するライブイメージング法を独自に開発した。その結果、Aundiffのニッチ領域(ニッチ細胞とニッチの場の総体)が、血管に近接する領域に規定されること(Science 2007)を明らかにした。本申請ではこのアドバンテージを活かして、以下の研究を行う。 ①マウスGSC(精子形成幹細胞)の同定とその性質の解明:Aundiffの中に少数含まれる真のGSCを同定するために、Aundiffの不均一性を、遺伝子発現・形態・細胞機能の統合的観点から解明する。 ②GSCニッチの実体と血管がニッチを規定するメカニズムの解明:血管に近接する「ニッチ領域」に特異的に発現する遺伝子を同定する。これを利用して、ニッチ領域の構築(ニッチ細胞とニッチの場)を解明すると共に、それらが血管により誘導される機構を解明する。 ③ニッチにおいてGSCあるいはAundiffを制御するメカニズムの解明:ニッチ領域に発現する因子の機能解析(in vitro及びin vivo)を通して、ニッチ細胞およびニッチの場が、GSCのアイデンティティーを保つ(自己複製)とともに、配偶子への分化を制御する機構を解明する。 ④他の動物種のGSC/ニッチ・システムとの比較:構造・機能・遺伝子発現の観点から動物種横断的に比較し、GSC/ニッチ・システムの基本プログラムを解明する。



    研究内容

     上記目的を達成するために、具体的に以下の研究を行う。 ①マウスGSC(精子形成幹細胞)の同定とその性質の解明:Aundiffの中で、形態的にGSCとして機能する可能性が高い亜集団に発現する遺伝子(GFRa1)をすでに同定している。この細胞集団を標識する系を確立し、ライブイメージングやパルス-追跡実験により、定常状態精子形成における機能を解析する。さらに、網羅的な遺伝子解析から詳細な亜集団を同定し、同様に機能解析する。 ②GSCニッチの実体と血管がニッチを規定するメカニズムの解明:血管に近接するニッチ領域をマイクロダイセクション法で回収、マイクロアレイ解析により特異的に発現する遺伝子を同定する。これは、連携研究者の杉本幸彦博士の協力を得て遂行する。この遺伝子発現を利用して、ニッチ細胞やニッチの場の構築を3次元的に解析するとともに、血管により誘導される機構を解明する。 ③ニッチにおいてGSCあるいはAundiffを制御するメカニズムの解明:ニッチ領域に発現する液性因子が、精原細胞培養の幹細胞能(=移植後のコロニー形成能)や増殖・分化能に与える作用を解析する(計画研究4と密接に連携する)。更に、個体における機能を異所性発現や変異体解析により明らかにする。 ④他の動物種のGSC/ニッチ・システムとの比較:本領域で対象としている他の動物種と、GSC/ニッチ・システムの構造(構成細胞とその構築)、機能、網羅的遺伝子発現解析データを動物種横断的に比較し、GSC/ニッチ・システムの基本プログラムを様々な階層において解明する。