The 55th NIBB Conference
Frontiers of Plant Science in the 21st CenturyConference Review |
Reports |
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Report◆ 山口 貴大 (基礎生物学研究所) 第55回NIBB カンファレンス ”Frontiers of Plant Science in the 21st Century” レポート
2008年9月13日から15日にかけて第55回NIBB カンファレンスおよびシロイヌナズナワークショップ2008共催による ”Frontiers of Plant Science in the 21st Century” が開催された.今回,会議の運営に参加させて頂いた立場として,本会議の成果や課題について以下に述べたいと思う. まず,本会議の最大の特色として,国内外の若手研究者の積極的な参加を図った点が挙げられる.本会議を企画するにあたっては,海外からの招聘研究者に,学生やポスドククラスの若手研究者の帯同を依頼し,彼らによる口頭発表をお願いした.国際学会などにおいても海外の学生やポスドクによる口頭発表を目にする機会は意外と少ないものである.今回彼らのプレゼンテーションを目にした日本の若手研究者には,自身のプレゼンテーションを国際基準で考える上で,とても良い刺激になったと思われる. また,非常にユニークな試みとして,総研大生を中心とする日本の学生と,海外からの若手研究者によるパネルディスカッションが行われた.この企画の趣旨は,今後の植物科学に関する課題を,若手研究者が提案し議論するというものである.海外の若手研究者による議題からは,自分の専門外の植物科学の課題に関しても,深い知識と主張を持っていることが感じられ,その視野の広さに非常に感心させられた.また日本の学生による議題からは,将来の植物科学の課題を大局的に考えようとする姿勢が感じられた.なお当初の計画として,司会を依頼した奈良先端科学技術大学院大学の武田征士氏,理研植物科学センターの Christian Breuer 氏に,全般的な進行を依頼する予定であったが,学生に経験を積ませた方が良いという判断により,急遽日本人学生が進行の大部分を担当する事になった.そのため,進行にはスムーズでない点が見られたが,会場の先生方からの,多数の共感できるコメントに助けられ,企画として一定の成功をおさめたと思う.企画運営に参加した学生には,今後国際的な場で発言し,自己主張する上での,非常に得難い経験になったはずである. また,先生方の計らいにより,若手研究者だけの食事会の機会も設けて頂いた.私もその場に参加させて頂いたが,普段目にする日本の学生の飲み会と変わらない光景が展開され,腹を割った国際交流を行うとても良い機会であった.参加者によるメーリングリストを立ち上げて,今後も交流を続けようという話も出ていたようで,この交流が将来の共同研究などの新展開につながる事を期待する. また,もう一つの特色として,企業・応用研究者の参加と言う点が挙げられる.企画段階ではもう少し多数の企業研究者の参加を試みていたが,準備期間があまり無い事もあり,今回はサントリー株式会社の田中良和博士のみのご参加となった.しかし田中先生の独自の視点,基礎研究に対するご意見は非常に新鮮であり,普段私たちが属している基礎研究のコミュニティーの中にいるだけでは気がつかないご指摘を数多くいただいた.基礎研究といえども,応用へのアウトプットが常に求められる時代である.今後同様の機会があれば,さらに多数の企業研究者にご参加いただき,植物科学に対する企業の視点,基礎研究に対するご意見を是非ともお伺いしたい. また,本会議を運営するにあたり,基生研戦略室の皆さんに,多大なるご支援を頂いた.戦略室設立以前から基生研にいながら,これまで戦略室がどのような部署であるのか,不明にして全く認識していなかったが,国際会議の企画運営が主な任務の一つであり,基生研の対外的活動を促進するための重要な組織であるということだ.実際,国際会議運営に関わる雑多な事項を確実に処理する経験と責任感,オーガナイザーの事情等によりなかなかまとまらない話をうまくまとめあげる戦略性を兼ね備えた貴重な組織であった.今後さらに円滑に国際会議を運営するために,これまで蓄積された運営ノウハウのシステム化を図ることが必要であろう.また,私のような助教クラスの研究者をオーガナイザーの一員として参加させる事により,細かい事項に対応する事が可能になるし,若手研究者にとっても研究コミュニティーに名を広める良い機会になると考えられる. 最後に会議全体を通しての感想であるが,今回植物科学の広い分野を対象としたことで話題が散漫になる心配があったが,各講演者の新規性のあるエキサイティングな話題提供により,植物科学の最先端の研究展開を広く知る良い機会になったと思う.ご参加くださった先生方に,この場を借りてもう一度御礼申し上げたい. |