![]() The 55th NIBB Conference
Frontiers of Plant Science in the 21st CenturyConference Review |
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Report◆ 藤井 知美 (基礎生物学研究所 総合研究大学院) 第55回NIBB カンファレンス ”Frontiers of Plant Science in the 21st Century” レポート
今回のコンファレンスでは、植物研究における様々な分野で活躍されている先生方の話が聞けて、私にとって大変有益だったと思います。しかし、残念だったことは、私の英語力が足りないために、発表者のプレゼンテーションを聞き取れず、理解できないことが多くあったことです。要項とスライドから何となく話している内容は推測できたのですが、せっかく本人が発表しているその場にいたのですから、やはり話を聞いて理解できたらよかったと思います。そのようなわけで、このコンファレンスは、英語の勉強へのモチベーションを高めてくれたものでした。 発表を聞いて、これからさらに発展していくのだろうと感じたのは、植物のペプチドホルモン関連分野です。名古屋大学の松林先生の研究では、新規ペプチドホルモン候補がいくつか見つかっているとのことでした。松林先生のアプローチでは、翻訳後修飾されるペプチドは生理活性をもっているだろうという推測から、チロシンがスルホン化されたペプチドをLC-MSで解析し、PSY1という、細胞の増殖や生長に関与するペプチドを発見されていました。なぜスルホン化に注目したのかは私には分かりませんでしたが、他の修飾様式に注目すれば別のペプチドホルモン候補を見つけられるのではないかと思いました。 また、川口先生のミヤコグサの研究では、根粒形成の抑制に、CLV1と似ているHAR1が関与していることがわかりました。シロイヌナズナでは茎頂分裂組織で細胞の分化に関与するCLV1のオルソログHAR1が、ミヤコグサでは根粒形成の抑制という、全く新しい働きを持っているのに驚きました。今後はHAR1のリガンドは何なのか、また、ミヤコグサの根粒形成の抑制とシロイヌナズナの茎頂分化の間に、似たようなシステムがあるのかということが明らかになれば非常に面白いと思いました。 このように、植物のペプチドホルモン分野は、これから新たな分子の発見やその機能が次々と明らかになっていくのではないかと思いました。 最後に、今回のコンファレンスの中で私が一番考えた問題というのが、実は、2日目のパネルディスカッションの最後のテーマだった、基礎研究はどのように社会に貢献していくかということでしたので、そのことについて触れておこうと思います。私の出身である薬学部では、如何に人類のためになるか、ということを重視した研究ばかりでした。目的がはっきりしているので、研究する意義を見いだすのも容易でした。しかし、基生研に来て一番違いを感じたのは、研究する目的が、自分が興味を持ったことを知るためであるということでした。必ずしも何かの役に立たなくてもよいという感じでした。私はこの考え方を頭から肯定はできません。もちろん、興味のあることを研究するのは、研究者なら皆同じだと思います。その興味の対象によって研究の善し悪しが決まるとは思いません。しかし、自分の興味が直接人類に役立つことではないかもしれませんが、何らかの形で世の中に貢献できたらいいという考えを常に持つことは大切なことだと思います。基礎研究をしている研究者がどう思っているかに関わらず、私は基礎研究は世の中にとって、重要だと思います。なぜなら、基礎研究があるからこそ応用研究が発展すると思うからです。基礎的な部分を理解していれば、その知識を効率的に応用面に利用できます。逆に基礎知識がなければ、ある有益な研究でも極限られた面でしか応用可能でなくなるでしょう。私は、一つ一つの実験においても、その実験に関する基礎的な知識を持っていないといけない、ということを実感しています。自分の研究が具体的にどのように役に立つかは分かりませんが、何らかの形で社会に貢献したいという気持ちを持って研究していきたいと思います。 |
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