《 基礎生物学研究所要覧 》

研究施設

RESEARCH SUPPORT

培養育成研究施設

 培養育成研究施設は,良質な研究材料の確保に必要な培養・育成設備及び適正な実験計測・解析のための種々の設備からなり,これらを一括して管理運営することにより,研究の能率化を計ろうとするもので,次の6室,1圃場から構成される。

大型スペクトログラフ室

 生命現象の光による調節の仕組みを解析するための世界最大・最高性能の分光照射装置であり,全国の研究者に対して開かれた共同利用設備である。毎年,(1)光情報による細胞機能の制御,(2)光エネルギー変換,(3)生物における空間認識・明暗認識,(4)紫外線による生体機能損傷と光回復,の4テーマに関し共同利用実験を公募している(平成13年度は20件が採択され,そのうち1件は外国人研究者が参加している)。

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大型スペクトログラフ

細胞器官培養室

 単細胞生物から多細胞生物までの細胞・組織・器官等を種々の物理的(光・温度),化学的(ガスの組成)環境条件のもとで培養する。さらに,遺伝子解析システムを用いての遺伝子のクローニングや構造解析,またP3レベルの遺伝子組換実験室では大腸菌を宿主とする組換え実験をはじめ,ウィルスの分離及び動物細胞への外来遺伝子導入などの実験が行われている。

実験圃場

 実験室では育成できない動・植物実験材料を大量に栽培及び飼育する設備で,大小2温室,5室のファイトトロン,3室の形質転換植物用温室,圃場及び管理室などが設置されている。

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P1温室

人工気象室

 実験植物及び動物を光・温度・湿度等を厳密に制御した条件のもとに培養育成するためのインキュベーターや恒温室が整えられている。特に強光及び極低・高温で培養育成する施設が設置され,順調に稼動している。これらのうちいくつかはP1レベルに指定されており遺伝子組換え実験も可能である。

下等真核細胞培養室

 下等真核生物の培養を専門に行う施設で,下等真核細胞を一定の環境条件下で培養,維持するための設備を整えている。

電子計算機室

 UNIXサーバーおよびワークステーションを中心に周辺機器やパーソナルコンピュータを有する。それらは所内の全研究室とネットワーク接続されており,インターネット(SINET)を介して所外へもアクセスできる。これらを用いてメールやWWWなどのネットワークサービス,データベースなどの情報提供を行っている。一部は所外に向けての情報発信をも行っている。配列解析等コンピュータ利用全般に関する相談,新しいサービスの導入と広報活動にも力を入れている。また,配列モチーフを利用した配列解析法の研究や,ゲノムプロジェクトの成果を取り入れたデータベースの構築の研究などが行われている。

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電子計算機

環境耐性植物実験室

 低温・高温・乾燥などの環境に対する植物の適応機構の解明,また,これらの環境への耐性能を増強した植物の分子育種による作製のために名古屋大学農学部と共同研究を行うための実験室。形質転換植物の成長制御設備,分子生物学的,生化学的及び生理学的解析用の実験機材を備える。環境耐性植物に関する国内及び国際共同研究の拠点の一つとしても機能している。名古屋大学農学部付属農場内に設置されている。

参考文献

  1. Iseki, M.,Matsunaga, S., Murakami, A., Ohno, K., Shiga, K., Yoshida, K., Sugai, M.,Takahashi, T., Hori, T. and Watanabe, M. (2002) A blue-light-activated adenylylcyclase mediates photoavoidance in Euglenagracilis. Nature415, 1047-1051.
  2. Kumano,K., Chiba, S., Shimizu, K., Yamagata, T., Hosoya, N., Saito, T., Takahashi, T.,Hamada, Y. and Hirai, H. (2001) Notch1 inhibits differentiation of hematopoeticcells by sustaining GATA-2 expression. Blood98, 3238-3239.
  3. Negishi,T., Nagaoka, C., Hayatsu, H., Suzuki, K., Hara, T., Kubota, M., Watanabe, M.and Hieda, K. (2001) Somatic-cell mutation induced by UVA and monochromatic UVradiation in repair-proficient and -deficient Drosophilamelanogaster.Photochem. Photobiol. 73, 493-498.
  4. Sakamoto,A. and Murata, N. (2001) The use of choline oxidase, a glycinebetaine-synthesizing enzyme, to create stress-resistant transgenic plants. PlantPhysiol.(Update), 125,180-188.
  5. Uchiyama, I. (2000)Hierarchial clustering procedure for grouping orthologous domains in multiplegenomes. In “Currents in Computational Molecular Biology” (Miyano, S., Shamir, R. andTakagi, T. eds.) pp. 146-147. Universal Academy Press, Tokyo


形質転換生物研究施設

 世界的規模で進められてきた全遺伝子配列解読(ゲノムプロジェクト)がほぼ完了し,基礎生物学の研究は遺伝子機能を解析するポストゲノムの時代に入った。この遺伝子機能の研究で主役を演じるのが,生物個体レベルでの遺伝子改変技術である。これは特定の遺伝子を欠損・改変・挿入することによって,遺伝子機能を生物個体レベルで解明していこうとするものである。

 形質転換生物研究施設は,こうした基礎生物学研究に必要な動物や植物の遺伝子改変生物の作製と解析を行うための施設であり,平成10年4月に設置された。基生研内に二室を設け,施設長(併任)と助教授(専任)1名で活動を開始している。平成14年度内には、植物系を含めた専任教官が新たに着任予定である。また平成15年度内には施設棟が竣工予定であり、以降本格的な施設の運用を開始する。現専任教官は,遺伝子改変マウスの作製と解析による脳神経機能の解明をテーマとして研究を行っている。

参考文献

  1. Watanabe,E., Maeda, N., Matsui, F. Kushima, Y., Noda, M. and Oohira, A. (1995) NeuroglycanC, a novel membrane-spanning chondroitin sulfate proteoglycan that isrestricted to the brain. J. Biol. Chem.270, 26876-26882.
  2. Shintani,T., Watanabe, E., Maeda, N. and Noda, M. (1998) Neurons as well as astrocytesexpress proteoglycan-type protein tyrosine phosphataseζ/RPTPβ: Analysis of mice in which the PTPζ/RPTPβgene was replaced with the lacZ gene. Neurosci. Lett.247, 135-138.
  3. Watanabe,E., Fujikawa, A. Matsunaga, H., Yasoshima, Y., Sako, N., Yamamoto, T., Saegusa,C. and Noda, M. (2000) Nav2/NaG channel is involved in control of salt intakebehavior in the CNS. J. Neurosci.12, 7743-7751.
  4. Zubair,M., Watanabe, E., Fukada, M. and Noda, M. (2002) Genetic labeling of specificaxonal pathways in the mouse central nervous system. Eur. J. Neurosci.15, 807-814.
  5. Hiyama,T.Y., Watanabe, E., Ono, K., Inenaga, K., Tamkun, M.M., Yoshida, S. and Noda,M. (2002) Nax is involved in the sodium-level sensing in the CNS. NatureNeurosci.5, 511-512.


情報生物学研究センター

 生命の基本システムを研究する基礎生物学において,ゲノム解析から生じた膨大なデータを生物学本来の目的に添って適切に整理し,円滑に検索・抽出するシステムを構築すると共に,生物諸科学と情報科学を融合した新しいゲノム科学の創造を目指す。


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