English

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

研究部門・施設

バイオリソース研究室

研究教育職員

成瀬 清
特任教授
成瀬 清
NARUSE, Kiyoshi

研究の概要

メダカを用いた遺伝子型 - 表現型相関の解明
 

2020_naruse_main_visual.jpg
バイオリソース研究室で維持しているメダカ系統と近縁種


メダカは小川や水田に生息する日本在来の野生動物で、東南アジアにはメダカの近縁種が 36 種以上分布している。また、日本オリジナルのモデル動物でもあり、近交系や突然変異体など、これまでに様々な性質を備えた系統が作出されてきた。本研究室では、これらの多様な生物遺伝資源(バイオリソース)を用いて、近縁種間における性染色体・性決定遺伝子の進化、体色突然変異体の原因遺伝子同定と色素細胞分化機構の解明など幅広い生命現象の理解を目指している。また、本研究室はメダカバイオリソースプロジェクト(NBRPメダカ)の中核機関として、メダカバイオリソースの整備を積極的に進めるとともに、様々なメダカ系統やゲノムリソースの収集・整備を行うとともに、それを国内外の研究者に広く提供している。さらに始原生殖細胞や精巣・卵巣組織の凍結保存と生殖細胞移植による系統回復技術などの技術開発も行っている。

 

メダカ属魚類における性決定遺伝子の進化

性染色体は分類群によって異なり、性染色体上に存在する性決定遺伝子の実体は多くの動物において明らかにされていない。このような性決定遺伝子の多様化をもたらした分子基盤を解明するため、近縁な種間で性染色体が異なるメダカ属魚類を用いて性決定機構の解析を行っている。これまでの研究から、インドメダカでは Y 染色体上の Sox3 遺伝子がオス決定遺伝子であることを明らかにした。哺乳類の性決定遺伝子 Sry も Sox3 から進化したと考えられていることから、同じ遺伝子が繰り返し性決定に利用されてきたことが明らかとなった。また、他の近縁種との比較から、下流の性決定カスケードは種間で保存されていることも判明した。インドメダカでは Y 染色体上の Sox3 が下流遺伝子 gsdf の発現を活性化するという、新たなパスウェイを獲得することによってオス分化を誘導することが明らかとなった。

体色突然変異体の原因遺伝子同定と色素細胞分化機構の解明

魚類は哺乳類と異なり複数の色素細胞を持つ。メダカでは哺乳類と共通な黒色素胞に加え黄色素胞、白色素胞、虹色素胞の 4 種類をもつ。さらに白色素胞はメダカ近縁種においても持っている種と持っていない種があることから新規形質発現の分子メカニズムを考えるための良いモデルになると考えられる。メダカで発見されている様々な体色突然変異体を用いてその原因遺伝子を同定したところ、白色素胞は黄色素胞と共通の幹細胞から分化し、その運命決定には sox5 遺伝子が重要な役割を果たすことが明らかとなった。また虹色素胞の変異体 guaninless の原因遺伝子は pnp4a であることを明らかにした。さらに黒色素胞と白色素胞の数がともに著しく減少する突然変異体 few melanophore の原因遺伝子を同定したところ kit-ligand a の機能喪失型変異であることが明らかとなった。白色素胞と黄色素胞が共通の前駆細胞を持つことを考えると kit シグナルは黄色素胞と白色素胞の共通前駆細胞から白色素胞前駆細胞へと分化した後に、黒色素胞前駆細胞と白色素胞前駆細胞への共通の増殖シグナルとして機能していると考えられた。
 

2020_naruse_fig1.jpg
図 1. メダカ色素細胞分化のモデル

メダカバイオリソースプロジェクトの推進

基礎生物学研究所はメダカバイオリソースプロジェクトの中核機関であり、我々はこのプロジェクトを推進するための中心研究室の役割を担っている。突然変異体、遺伝子導入系統、近縁種等 600 を越える系統についてライブ及び凍結精子として保存し、リクエストに応じて提供をおこなっている(図2参照)。また、 131 万を越える BAC/Fosmid/cDNA/EST クローンも保存・提供をおこなっている。2010年からは TILLING 法 によって作製された突然変異体の同定システム及び CRISPR-Cas9 によるゲノム編集システムを共同利用研究者に提供することで、逆遺伝学的手法による解析の普及を推進している。まだドナーベクターを用いた CRISPR-Cas9 によるノックインシステムの開発なども行っている。
 

2020_naruse_fig2.jpg
図 2. メダカバイオリソースプロジェクトで提供しているメダカ系統
近交系 Hd-rR(上段), actin-DsRed 遺伝子導入系統(中段)、透明メダカ Quintet(下段)。

共同研究利用の募集

バイオリソース研究室では、魚類をもちいた遺伝学的研究、フォスミドゲノムライブラリーの作製、CRISPR/Cas9によるメダカ変異体の作製、メダカトランスジェニック系統の作製に関する共同研究を募集しています。その他の共同研究でも対応できる場合もあります。魚類を用いた研究にご興味がある方はぜひ一度ご連絡ください。
共同利用研究例:メダカ突然変異体のマッピング、アマガエルフォスミドライブラリーの作成など

大学院生の募集

バイオリソース研究室では大学院生を募集しています。メダカを用いた遺伝学的研究一般や比較ゲノム学、量的形質の遺伝などに興味がある方を歓迎します。

Webサイト

研究室関連資料

参考文献

Otsuki, Y., Okuda, Y., Naruse, K., et al. (2020). Identification of kit-ligand a as the gene responsible for the medaka pigment cell mutant few melanophore. G3 10, 311-319.
 
Watakabe, I., Hashimoto, H., Kimura, Y., et al. (2018). Highly efficient generation of knock-in transgenic medaka by CRISPR/ Cas9-mediated genome engineering. Zool. Lett. 4, 3.
 
Kimura, T., Takehana, Y. and Naruse, K. (2017). Pnp4a is the causal gene of the medaka iridophore mutant guanineless. G3 7, 1357-1363.
 
Kirchmaier, S., Naruse, K., Wittbrodt, J. and Loosli, F. (2015). The genomic and genetic toolbox of the teleost medaka (Oryzias latipes). Genetics 199, 905-918.
 
Kimura, T., Nagao, Y., Hashimoto, H. et al. (2014). Leucophores are similar to xanthophores in their specification and differentiation processes in medaka. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 111, 7343-7348.
 
Takehana, Y., Matsuda, M., Mosho, T. et al. (2014). Co-option of Sox3 as the male-determining factor on the Y chromosome in the fish Oryzias dancena. Nat. Commun. 5, 4157.

連絡先

成瀬 清 准教授 E-mail: naruse@nibb.ac.jp  TEL: 0564-55-7580

写真

成瀬 清 _写真1