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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

研究部門・施設

生物進化研究部門

研究教育職員

長谷部 光泰
教授
長谷部 光泰
HASEBE, Mitsuyasu
石川 雅樹
助教
石川 雅樹
ISHIKAWA, Masaki
瀬上 紹嗣
助教
瀬上 紹嗣
SEGAMI, Shoji
眞野 弘明
特任助教
眞野 弘明
MANO, Hiroaki
幸節 健
特任助教
幸節 健
KOSETSU, Ken

研究の概要

何がどうかわることによって進化するのか
 

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生物は祖先が持っていなかった新しい形質を次々と生み出しながら進化してきた。そして、新規形質の多くは、いくつかの性質が整って初めて有利になるような複合形質である。新規複合形質はランダムな突然変異の蓄積だけで説明できるのか。あるいは未知の進化機構が存在しているのか。この問題を解くには、新規複合形質を遺伝子のレベルに還元し、それらができあがるメカニズムを解明し、さらに、近縁種との比較から進化過程を推定することが必要である。我々は、ゲノム解読と改変技術の革新を助けに、モデル生物に加え、これまで分子生物学、分子遺伝学的還元のできなかった非モデル生物を材料として、(1)植物細胞の分裂軸決定機構、(2)多能性幹細胞形成維持機構、(3)陸上植物の発生、(4)植物の食虫性、(5) 植物の運動を個別な研究対象として、それらから得られた結果を総合し、新規複合形質がどのように進化しうるかのメカニズムを描き出すことを目指している。(詳細は https://www.nibb.ac.jp/evodevo)。
 

植物の細胞分裂方向はどのように決まるのか

植物細胞は細胞壁で囲まれているので動けない。そのため、細胞がどちらの方向に分裂、伸長するかが、その後の組織や器官の形を決定する。つまり、植物の発生の根本原理は細胞分裂・伸長をどのように制御するかにある。動物の細胞分裂方向を決める中心体は、植物には無い。いったいどのような仕組みで細胞分裂方向を決めているのかを探求している。
 

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図1. 特定のタンパク質局在(黄色矢印)を起点として紡錘体が形成される。
 

分化細胞から幹細胞への転換機構

我々が発見したステミン STEMIN という遺伝子を働かせるだけで、体の中にある分化した葉細胞を幹細胞に変化させることができる。ステミンは転写因子であるが、それ以外に、クロマチン修飾や DNA 損傷と関連して幹細胞化の未知の分子機構を担っているらしいことがわかってきた。大きな変化をどうして1つの遺伝子が引き起こせるのか。これは複合形質がどのように進化するのかと同じ根を持つ生物学上の問題である。
 

食虫植物の進化

食虫植物は小動物を葉で誘引、捕獲、消化、吸収することで、貧栄養地でも生育できる。食虫性の進化は複合適応形質進化の典型例であり、ゲノム解読と遺伝子改変による研究で多くのことがわかってきた。ムラサキヘイシソウの捕虫葉は奇妙な袋型をしているが、通常の植物の持つ扁平な葉から葉の特定の部分の細胞分裂方向を変化させるだけで進化しうることがわかった。フクロユキノシタで、温度によって通常葉と捕虫葉を作りわけさせることに成功し、比較解析が可能となった。ハエトリソウは 30 秒以内に2回感覚毛を刺激すると閉じるが、カルシウムが記憶物質として機能し、閾値を超えると葉が閉じることがわかった。そして、モウセンゴケ科の共通祖先でゲノム重複がおこることで多くの遺伝子の進化速度が上昇したこと、さらに、植物の老化の遺伝子系を一部改変することで、消化と吸収の両方が進化しうることがわかってきた。
 

植物の速い運動の進化

 植物の運動機構の進化も多くの形質進化が必要である。我々はゲノム解読と遺伝子操作を通して、オジギソウ、モウセンゴケ、ムジナモの機械刺激受容機構、刺激伝達機構、運動機構、そして、それらがどのように進化してきたかを研究している。オジギソウで破壊すると、運動がおこらなくなる遺伝子、就眠運動は正常だがお辞儀運動だけおかしくなる遺伝子、そして、過剰発現すると運動能力が亢進される遺伝子などが得られた。
 

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図2. オジギソウの運動機構のメカニズムとその進化を知りたい。
 

共同研究利用の募集

上記研究内容に関連する共同研究を歓迎します。

大学院生の募集

独自の研究フィールドを切り開いていく気概を持つ方、お手伝いします。
研究室の様子(PDF) (総研大ジャーナル14号より転載)
修了生の声

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研究室関連資料

参考文献

Gu, N. et al. (2020). DNA damage triggers the reprogramming of differentiated cells to stem cells in Physcomitrella. Nat. Plants In press.
 
Palfalvi, G. et al. (2020). Genomes of the Venus flytrap and close relatives unveil the roots of plant carnivory. Curr. Biol. 30, 2312-2320.e5.
 
Ishikawa, M. et al. (2019). Physcomitrella STEMIN transcription factor induces stem cell formation with epigenetic reprogramming. Nat. Plants 5, 681-690.
 
Koshimizu, S. et al. (2018). Physcomitrella MADS-box genes regulate water supply and sperm movement for fertilization. Nat. Plants 4, 36-45.
 
Fukushima, K. et al. (2017). Genome of pitcher plant Cephalotus reveals genetic changes associated with carnivory. Nat. Ecol. Evol. 1, 0059.
 
Li, C. et al. (2017). A Lin28 homolog reprograms differentiated cells to stem cells in the moss Physcomitrella patens. Nat. Commun. 8, 14242.
 
Fukushima, K. et al. (2015). Oriented cell division shapes carnivorous pitcher leaves of Sarracenia purpurea. Nat. Commun. 6, 6450.
 
Murata, T. et al. (2013). Mechanism of microtubule array expansion in the cytokinetic phragmoplast. Nat. Commun. 4, 1967.
 
Sakakibara, K. et al. (2013). KNOX2 genes regulate the haploid-to-diploid morphological transition in land plants. Science 339, 1067-1070.
 
Banks, J.A., Nishiyama, T., Hasebe, M. et al. (2011). The Selaginella genome identifies genetic changes associated with the evolution of vascular plants. Science 332, 960-963.
 
Rensing, S.A. et al. (2008). The Physcomitrella genome reveals evolutionary insights into the conquest of land by plants. Science 319, 64-69.
 
長谷部光泰 (2020). 陸上植物の形態と進化. 裳華房.

連絡先

長谷部 光泰 教授 E-mail: mhasebe@nibb.ac.jp  TEL: 0564-55-7547

映像

写真

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