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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

研究部門・施設

再生生物学研究室

研究教育職員

阿形 清和
所長
阿形 清和
AGATA, Kiyokazu
Jakub Wudarski
特任助教
Jakub Wudarski
Jakub Wudarski

研究の概要

再生原理を解明して、再生できない動物を再生させる

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〔上段〕プラナリア(Dugesia japonica)。ここでは1匹を(左端写真)、6つの断片に切り(左から二番目の写真、切断直後)、再生24時間後(左から三番目の写真)、再生6日後の写真(右端)。再生6日目には、前方の再生芽(白ぽく見えている所)に小さな眼が再生している。元の頭断片(右端写真の一番上の断片)の眼は元の眼が残っているので大きいのに気がつく。このように、プラナリアの再生①ミニチュアとして再生する、②横切りされた断片は頭側と尾側の極性を記憶しており、元の頭側に頭部を、元の尾側に尾を再生する。
〔下段〕左からイベリアトゲイモリ(Pleurodeles waltl)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)、ネッタイツメガエル(Xenopus tropicalis)、右後方には日本産のアカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)。有尾両生類であるイモリは、変態後にも高い再生能力を保持しているのに対し、無尾両生類のカエルは変態後に多くの再生能力を失うことが知られている。

プラナリアやイモリは高い再生能力を有している。しかし、同じプラナリアの仲間であっても再生能力の低いものもいるし、イモリと同じ両生類のカエルは変態後に多くの再生能力を失う。①われわれはプラナリアやイモリを使って再生の原理を理解し、②再生できない動物が再生のどのステップで止まっているのかを明らかにし、③そのステップを人為的に乗り越えることで再生できない動物を再生できるように挑戦している。今までに、尾部断片から頭部を再生できないコガタウズムシを RNA 干渉法で頭部再生を惹起し(Nature, 2013)、関節を再生できないカエルで関節の再生を惹起することに成功している(Regeneration, 2016)。

再生できる生き物に再生の原理を学び、再生できない生き物を再生できるようにする

当研究室では、①プラナリアやイモリといった再生できる生き物を用いて『再生の原理』を明らかにし、②再生できない生き物と何処が違うのかを比較し、再生をできなくしているステップに操作を加え、③再生できない生き物を再生できるようにする、ことを目標に研究を展開している。すなわち、『再生の原理がわかれば=ヒトでも再生できるようになる』という気概で研究をしている。

プラナリアの研究から歴史的な成功例が生まれる

『再生の原理がわかれば=再生できないものが再生できるようになる』という歴史的な実例はプラナリアの再生研究によって作られた。プラナリアの再生が『ディスタリゼーション&インターカレーション』といった原理で行われていること(文献1)、そしてその分子機構を明らかにしたことで(文献2,3)、尾部断片から頭部を再生できないコガタウズムシを β-カテニン遺伝子の RNA 干渉法によって頭部再生を惹起させることに成功した(文献3)。単に頭部が再生しただけではなく、機能的な脳も再生されたのだから大きな驚きを生み New York Times にもホットな話題として取り上げられた。

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図1. コガタウズムシの尾部断片から再生した頭部


イモリの関節再生研究から新たな再生原理がみつかり、その結果、関節を再生できなかったカエルで関節再生の惹起に成功!

『再生の原理がわかれば=再生できないものが再生できるようになる』という実例の2例目が脊椎動物で成功する。イモリの肘関節部分で切断するとミニチュアの腕を再生するが、ミニチュアのうちから関節が動き始める。根元には大きな関節球が残っているのに、何でミニチュアの再生部分の関節が動くの?大きさの差はどのように克服しているの? わかったことは、残存部の関節部が再生部分の軟骨に何やらの作用をすることで、残存部の関節球に接している再生部の軟骨の大きさを制御していることが判明した。すなわち、再生部分は、残存部の作用を受けることで、残存部と整合性のとれた形や大きさの組織を再生することが示唆された(文献4)。そこで、関節を再生できないと言われていたカエルで、関節部位で切断していたところ、何と機能的な関節の再生を惹起することに成功した(文献5)。

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図2. カエルで再生した関節


マウスやヒトで眠っている再生能力をたたき起こせるか?

これらの成功例をベースに、いよいよマウスやヒトでも眠っている再生能力を引き出せないかに挑戦している。新たな研究の展開に乞うご期待。

研究室関連資料

参考文献

Agata, K., Tanaka, T., Kobayashi, C., Kato, K., and Saitoh, Y. (2003). Intercalary regeneration in planarians. Dev Dyn 226, 308-316.

Cebria, F., Kobayashi, C., Umesono, Y., Nakazawa, M., Mineta, K., Ikeo, K., Gojobori, T., Itoh, M., Taira, M., Sanchez Alvarado, A., and Agata, K. (2002). FGFR-related gene nou-darake restricts brain tissues to the head region of planarians. Nature 419, 620-624.

Umesono, Y., Tasaki, J., Nishimura, Y., Hrouda, M., Kawaguchi, E., Yazawa, S., Nishimura, O., Hosoda, K., Inoue, T., and Agata, K. (2013). The molecular logic for planarian regeneration along the anterior-posterior axis. Nature 500, 73-76.

Tsutsumi, R., Inoue, T., Yamada, S., and Agata, K. (2015). Reintegration of the regenerated and the remaining tissues during joint regeneration in the newt Cynops pyrrhogaster. Regeneration (Oxf) 2, 26-36.

Tsutsumi, R., Yamada, S., and Agata, K. (2016). Functional joint regeneration is achieved using reintegration mechanism in Xenopus laevis. Regeneration (Oxf) 3, 26-38.

写真

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