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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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研究部門・施設

自然科学研究機構 新分野創成センター プラズマバイオ研究分野

研究教育職員

山下 朗
特任准教授
山下 朗
YAMASHITA, Akira
大坪 瑶子
特任助教
大坪 瑶子
OTSUBO, Yoko

研究の概要

細胞の環境応答機構

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細胞は、自分の周囲にある栄養素やホルモンの量をはじめ、温度や圧力なども感知して、どのような活動を行うかを決定する。卵子や精子を生み出す細胞である生殖細胞は、周囲の条件に応答して、染色体の数を半減させる特殊な細胞分裂である減数分裂を開始する。本研究室では減数分裂を行う最も単純な生物である分裂酵母を用いて、細胞が周囲の状況に応じて二分裂で増え続ける状態から減数分裂へと活動を切り替える仕組みを調べている。本研究室ではまた、生体に様々な影響を与えることが知られている低温大気圧プラズマの作用機序を細胞レベルで明らかにすることを目指し、分裂酵母を用いた基礎生物学的な解析を行っている。

細胞の環境応答機構

全ての細胞は、外界からの刺激を感受し、細胞内で情報処理を行い、分化や増殖といった選択肢を選びとって生存している。細胞が環境の変化に適切に応答する機構は、生物にとって最も基本的かつ欠かすことのできないものであり、我々ヒトを含む生物個体が正常に発生し、維持される上で欠かせないものである。本研究室では、分裂酵母 Schizosaccharomyces pombe が栄養源飢餓に応答して行う減数分裂をモデル系として、細胞の環境応答機構を分子レベルで記載することを目標としている。また、新規の環境ストレスとして低温大気圧プラズマを用いて、新たな細胞応答機構の探索を進めている。

分裂酵母の有性生殖

分裂酵母は栄養源が豊富な状態では、一倍体で体細胞分裂を行い増殖する。培地中の栄養源が枯渇してくると、分裂酵母は有性生殖過程へと移行する。二つの一倍体細胞が接合して二倍体となり、引き続いて減数分裂を行い、最終的に配偶子に相当する胞子を形成して、環境の回復を待つ。シンプルな生物である分裂酵母の有性生殖過程を研究することで、種を超えて保存されている、細胞が栄養源を認識する仕組みや、配偶子形成の根幹をなす減数分裂の分子機構に迫ることができると期待される。

TOR キナーゼによる栄養源の認識

真核生物で保存された TOR キナーゼ(Target of Rapamycin)は、外界の状況を細胞内に伝えて増殖を制御する経路において中心的な役割を果たしており、様々な疾患との関わりからも注目を集めている。分裂酵母は、他の生物種と同様に、二つのタイプの TOR 複合体を有している。興味深いことに、Tor2 キナーゼを含む TOR 複合体 1(TORC1)は有性生殖の開始に対して負に、Tor1 キナーゼを含む TORC2 は正に働いている(図1)。当研究室では、分裂酵母細胞が、栄養状態を TOR 経路を介して伝達し、有性生殖を開始する仕組みの解明に取り組んでいる。

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図1. 有性生殖の開始を制御する二つの TOR 複合体
有性生殖の開始に対して TOR 複合体 1(TORC1)は負に、TOR 複合体 2(TORC2)は正に作用する。

 

減数分裂期の遺伝子発現制御

細胞は、遺伝子発現を切り替えることで、環境の変化に応答して、様々な機能を獲得していく。分裂酵母においても、減数分裂期に入ると、数多くの遺伝子の発現が上昇することが知られている。我々の研究によって、減数分裂期の遺伝子発現の上昇に、転写産物の時期特異的な分解制御が大きく寄与していることが明らかとなってきた(図2)。当研究室では、減数分裂遺伝子の発現制御に欠かせない RNA 結合タンパク質と非コード RNA の機能解析を進めることで、遺伝子発現制御系の新たな仕組みを解き明かすことを目指している。

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図2. 減数分裂転写産物の選択的除去
体細胞分裂期に、一群の減数分裂特異的な転写産物は、RNA 結合タンパク質 Mmi1 により認識されて核エクソソームによる選択的な分解を受ける。減数分裂期には、Mmi1 が Mei2 dot により阻害され、転写産物は分解を免れる。

低温大気圧プラズマに対する細胞応答

近年、気体がエネルギーを与えられてイオン化した状態となったプラズマを低温大気圧下で発生させることが可能となった。生体にプラズマ照射を行うことで様々な影響が出ることが知られており、プラズマの医療や農業への応用が期待されている。しかしプラズマが生体に作用する仕組みは明らかにされていない。本研究室では分裂酵母を用いて、低温大気圧プラズマが細胞に与える影響の全貌を解明することを目指している。同時に、プラズマを用いた新たな実験手法の開発に取り組んでいる。

Webサイト

研究室関連資料

参考文献

Shichino, Y., Otsubo, Y., Yamamoto, M. and Yamshita, A. (2020). Meiotic gene silencing complex MTREC/NURS recruits the nuclear exosome to YTH-RNA-binding protein Mmi1. Plos Genetics 16, e1008598.
 
Otsubo, Y., Matsuo, T., Nishimura, A., Yamamoto., M. and Yamashita, A. (2018). tRNA production links nutrient conditions to the onset of sexual differentiation through the TORC1 pathway. EMBO Reports 19, e44867.
 
Shichino, Y., Otsubo, Y., Kimori, Y., Yamamoto., M. and Yamashita, A. (2018). YTH-RNA-binding protein prevents deleterious expression of meiotic proteins by tethering their mRNAs to nuclear foci. eLife 7, e32155.