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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

研究部門・施設

定量生物学研究部門

研究教育職員

青木 一洋
教授
青木 一洋
AOKI, Kazuhiro
近藤 洋平
助教
近藤 洋平
KONDO, Yohei
後藤 祐平
助教
後藤 祐平
GOTO, Yuhei

研究の概要

細胞の情報伝達を定量的に理解し細胞機能を操作する

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私たちの研究室で使われている培養細胞、分裂酵母、線虫を使った蛍光イメージング画像の一例。

 

細胞は、増殖因子やストレスなど細胞外からの入力情報を感知し、環境の変化に適応するように細胞機能を発現することで恒常性を維持している。しかし、多くの場合、細胞外環境はノイジーで絶えず変化しており、細胞がどのようにして入力情報を処理して表現型を出力しているのか、その分子機構は十分に分かっていない。私たちは、「細胞内情報伝達系」と呼ばれる細胞内の化学反応ネットワークを蛍光イメージングにより可視化し、光や小化合物によって操作するというアプローチを通じて、細胞機能の創発原理を定量的に理解することを目指している。
 

細胞のふるまいを定量的に理解する

細胞は生命の基本ユニットである。細胞は、環境や内的な状態の変化に応答し、適切に表現型に変化させ適応する。それを可能にしているのは、「細胞内情報伝達系」と呼ばれる細胞内の反応ネットワークシステムである。このネットワークは、分子と分子の結合や酵素反応といった化学的な素反応がいくつも連鎖して構成されている。

私達は、細胞や組織、個体の維持にとって本質的な機能である、細胞増殖・分化・細胞死の3つの表現型に関連するシグナル伝達系を定量的に理解することを目指している。アナログ的でしなやかな細胞内情報伝達系が、デジタル的で頑強な表現型を創発する原理に迫りたい。以下に、私たちが主として用いている技術を紹介する。
 

可視化

細胞内情報伝達系を生きた細胞内で定量的に可視化するためのバイオセンサーを開発している。細胞内の分子活性の変化を1細胞レベルで経時的に捉えることができる、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくバイオセンサー(文献4、6)(図1)や、蛍光タンパク質の円順列変異体を用いたバイオセンサー、細胞内局在を指標にしたバイオセンサー(文献2)を開発している。リン酸化酵素やGPCR といった分子の活性を生きた細胞において可視化することで、生化学的な手法では見えてこなかった細胞の中のダイナミックな化学反応をとらえることができる。

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図1:リガンドで刺激したときのPKA, Akt, PKC, ERK, JNK, S6K 活性をFRET イメージングで可視化した結果
キナーゼ活性を疑似カラーで示している。寒色が低活性、暖色が高活性を示しており、それぞれの色の明るさがFRET バイオセンサーの細胞内の局在を示している。
 

定量化

反応パラメーターを効率良く取得するための技術開発も行っている。蛍光相互相関分光法(FCCS)を用いた解離定数(Kd)の測定(文献1)、CRISPR/Cas9 遺伝子編集法による内在性分子の濃度の測定、イメージングによる酵素反応速度定数の測定などを行っている。得られたパラメーターを基に、ボトムアップでシミュレーションモデルを作成し、数値計算により仮説を検証する。また、細胞組織の変形と力の画像データを基に、非侵襲的に組織の硬さを見積もる手法も開発している(文献3)。
 

操作

細胞内情報伝達系のダイナミックな変化がしばしば細胞機能と密接に関連することが分かってきた。この細胞内情報伝達系のダイナミクスと表現型との因果関係を直接的に検証するためには、細胞内情報伝達系のダイナミクスを構成的に作り出し、期待される結果が得られるかを調べる必要がある。そこで、薬剤や光遺伝学による細胞内情報伝達系の摂動法の開発にも取り組んでいる(文献5、6)。

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図2:光による細胞内分子局在の操作の一例
遠赤色(Far-red)光では細胞質に局在しているが、赤色(red)光照射により分子が形質膜直下へと細胞内局在を変化させることができる。多くの細胞内情報伝達は分子局在の変化を伴うことが知られており、この原理により細胞内情報伝達系を操作することができる。

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大学院生の募集

当研究部門では大学院生を募集しています。これまでの研究内容、基礎知識は問いません。こつこつと真摯に研究に取り組んでいただける大学院生を歓迎します。大学院生活を通じて、論理力、英語力、問題発見・解決能力を培っていただき、アカデミック、民間と問わずに社会で活躍できる人材を育成したいと考えています。入学興味のある方はお気軽にご連絡ください。研究室見学も歓迎します。

Webサイト

研究室関連資料

参考文献

Komatsubara, A.T., Goto, Y., Kondo, Y., Matsuda, M., Aoki, K. (2019). Single-cell quantification of the concentrations and dissociation constants of endogenous proteins. J. Biol. Chem. 294, 6062-6072.
 
Miura, H., Kondo, Y., Matsuda, M., Aoki, K. (2018). Cell-to-cell heterogeneity in p38-mediated cross-inhibition of JNK causes stochastic cell death. Cell Reports 24, 2658-2668.
 
Kondo, Y., Aoki, K., Ishii, S. (2018). Inverse tissue mechanics of cell monolayer expansion. PLoS Comput. Biol. 14, e1006029.
 
Aoki, K., Kondo, Y., Naoki, H., Hiratsuka, T., Itoh, RE., Matsuda, M. (2017). Propagating Wave of ERK Activation Orients Collective Cell Migration. Dev.  Cell 43, 305–317.
 
Uda, Y., Goto, Y., Oda, S., Kohchi, T., Matsuda, M., Aoki, K. (2017). Efficient synthesis of phycocyanobilin in mammalian cells for optogenetic control of cell signaling. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 114, 11962-11967.
 
Aoki, K., Kumagai, Y., Sakurai, A., Komatsu, N., Fujita, Y., Shionyu, C., and Matsuda, M. (2013). Stochastic ERK activation induced by noise and cell-cell propagation regulates cell density-dependent proliferation. Mol. Cell 52, 529-540.

連絡先

青木 一洋 教授 E-mail: k-aoki@nibb.ac.jp

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写真

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