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コンセプト

背景・課題

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、広い地域において研究・開発活動にも大きな影響を与えました。地震による直接被害とともに、長期にわたるライフラインの停止によって実験動物の飼育も困難となり、超低温フリーザー等に保管していた生物遺伝資源は大きなダメージを受けました。その結果、多くの研究者が研究計画の中断や変更をを余儀なくされました。日本は地震多発国であり、東日本大震災後も震度6強を超える地震が熊本県熊本地方及び阿蘇地方や鳥取県中部地方など年1回以上の頻度で発生しています。研究・開発活動を震災から守るための対策は不可欠です。

我が国の研究・開発の発展に生物遺伝資源は欠かすことのできない物です。特に生命科学分野では従来のモデル生物に加え、非モデル生物といわれる興味深い生命現象を示す材料を用いた研究の進展や、遺伝子改変技術の開発により、長期保存すべき生物遺伝資源の数は急速に増加しています。これらの貴重なサンプルは震災等の災害だけでなく、機器の故障や人災等によっても毀損・消失する可能性があり、研究者自身が生物遺伝資源の消失を避ける事ができない事象であることを認識し、不測の事態が起きてもすぐに研究・開発活動を再開できるようにするための対策を講ずることが、生命科学研究の安定した発展に必要となります。

さらに、多様な実験材料を用いた研究やその遺伝子改変技術の進展により維持しなければならない生物の数は膨大となり、飼育維持に必要なコストは増加しています。その一方で、非モデル生物を長期に超低温下で保存するための方法は確立していないことも多く、それぞれの生物に適した超低温保存技術の開発は急務となっています。

対応

これらの課題に対応すべく、大学連携バイオバックアッププロジェクト ( IBBP ) は、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物学研究所に、国内の研究者が利用できる集中バックアップ保管施設としてIBBPセンターを設置しました。IBBPセンター内には気相及び液相式液体窒素タンク、液体窒素自動供給システム、ドライキャビネットを備えた種子保存室、超低温フリーザー、生物遺伝資源管理データベースシステム、機器監視システム、液体窒素製造装置など生物遺伝資源を安全にバックアップ保管するための設備と、プログラムフリーザー、示差走査熱量計、真空冷却加熱ステージ付き蛍光顕微鏡、精子運動解析装置等の超低温保存技術の開発を推進するための機器を整備しています。さらに新規保存技術開発を目的とした共同利用研究の実施や Cryopreservation Conference の開催によって、生物遺伝資源開発者と低温生物工学・化学・物理学研究者等に出会いの場を提供し、より多様な生物遺伝資源の長期保存技術の開発を推進するとともに、開発された技術を研究コミュニティーに広げるための技術講習会も開催しています。

これらの事業を IBBP は、北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学及び九州大学に設置した大学サテライト拠点と IBBPセンターが連携して推進し、不測の事態に対応するためのバックアップ保管の支援と、安定した研究・開発環境を提供したいと考えています。

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