2012.06.16 第5回evo-devo青年の会
原義の "Epigenetics "から進化を理解する
2012年06月16日(土) 11:00 より 18:00 まで
岡崎コンファレンスセンター
生物進化研究部門 玉田 洋介 (7545)
企画主旨
表現型の進化(Evolution)を、発生過程(Development)で作用する遺伝子群の変異によって説明したいーこれが、Evo-Devo(進化発生学)における現在の研究の大きな流れである。しかし、表現型つまり形態や行動を、特定の遺伝子群の配列や働きと結びつけ、直接的に説明するという試みは必ずしも成功を収めておらず、両者の間に横たわるギャップは暗く深い。これは、表現型発現に"関与"する遺伝子群を根こそぎ同定しうる現在の技術をもってしても同様だ。
このギャップを埋めるため、生物進化が持つ複雑な階層性について思いを致したい。多数の遺伝子は個々の細胞の性質やふるまいを左右し、細胞が多数集まって組織をなし、複数の組織が協働して最終的な形態を作り上げる。そして形態は環境との相互作用を通じて行動を基礎づける。このように、一つ一つの階層の中における、あるいは階層を超えた相互作用が、発生を通じて全体として統合された表現型を作り出す。とすると、これら相互作用の調停された変更こそが進化であると考えられる。言い換えれば、特定の階層、特に遺伝子の階層だけにフォーカスしていてはそのような変更を説明できない。
このように、生物のもつ複雑な組織性を、あくまで機械論的に記述していこうとする流れは、しばしば"epigenetic(後成説的)"と形容される。この流れは、発生学の誕生を促した概念を原点とするものだ。同時に、現在のEvo-DevoやEco-Devo-Evoの根幹にある思想でもある。環境、行動、形態、遺伝子、そのどれにも決定的な軸足をおくことなく、あくまで複雑な相互作用としてこれらをとらえ、種や現象に応じて適切な説明の仕方を見出していく、そういった姿勢が"epigenetics"の特徴である。
とはいえ、そのような複雑なシステムを全て記述し尽くすことは難しいばかりか、本質をぼやけさせる危険すらある。やみくもに網羅するのではなく、要点を絞りたい。個々の進化現象を引き起こしたであろう因果関係を、階層の中から適切に選択し、説明方法を柔軟に選んでいくこと。このような多元論的かつゆるやかな統合が、今後のEvo-Devo、あるいは拡張された総合説の実践に際し、求められているのではないだろうか。
本集会では、まさにこのようなアプローチを実行されている若手研究者を演者として招いた。分野はさまざまに異なるが(形態形成、数理生物、機能形態、比較形態、そして制御工学)、各分野において表現型とその進化を"epigenetic"な仕方で理解するべく、野心的な研究を行われている方々である。表現型進化を因果的に説明する方法論の可能性について、会場全体で議論を深めたい。
プログラム
11:00-11:20 企画説明
11:20-12:00 講演 三浦 岳 博士
12:00-12:40 講演 近藤武史 博士
(昼休み)
14:00-14:40 講演 宮坂恒太 博士
14:40-15:20 講演 松村洋子 博士
(休憩 30分)
15:50-16:30 講演 椎野勇太 博士
16:30-17:10 講演 杉本靖博 博士
17:10-17:20 コメント 中尾 央 氏
17:20-17:40 総合討論
18:00- 交流会・ポスターセッション
※参加者およびポスター発表を募集しております。受け付け〆切は5/31です。講演の詳細は、下記をご参照ください。