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神経系の形成に関与する因子


サイトカインの神経系における役割

 自律神経系の中でも交感神経がアドレナリン性であることは一般に良く知られている。初代培養した交感神経は当然のことながらアドレナリン性を示すが、これに非神経細胞の培養上清(例えば,心臓培養細胞上清)を添加すると、アドレナリン性が抑制されるのみならずアセチルコリンの合成が著しく促進されることが、1970年代の初頭にハーバード大学のパターソン博士等によって示された。この現象は、従来変化しないと考えられていた神経細胞が環境の変化に応じて変わり得ることを示した点で重要な実験であるが、この心臓培養上清中に含まれる分子的実体が山森等によって明らかにされたのは1989年である。


 コリン作動性分化因子(CDF: cholinergic differentiation factor)と名付けられたこの物質は結局のところ白血病抑制因子(LIF: Leukemia Inhibitory Factor)と同一遺伝子産物であることが判明した(Yamamori et al., Science, 246(4936),1412-6, 1989)。その後,4つの研究グループによりこの受容体の分子的解明からこの因子がIL-6と呼ばれるサイトカインの一種と同じファミリー(家族)に属するものであることが明らかにされた。実はこれらのサイトカインの受容体は免疫グロブリンとよく似た構造を有するので、これらは同じ共通の祖先から進化してきたと考えられる (Yamamori and Sarai, Neurosci Res., 15(3):151-61, 1992; Yamamori and Sarai, J Physiol Paris., 88(3):165-71, 1994)。


  サイトカインはもともと、血球、リンパ細胞間の細胞相互作用を媒介するものとして発見、研究されてきたもので、現在その遺伝子が数十種類以上知られている。近年、それらが血球、リンパ球などの免疫系以外にも広くその効果がある場合があることが知られるようになってきた(Yamamori, Neurosci Res., 12(5):545-82, 1992)。前述したCDF/LIFは、そうしたサイトカインが少なくとも培養神経細胞に特定の機能を持つことを示した最初の顕著な例であるが、我々はIL-6ファミリーの脳神経発生における発現パターンを徹底的に調べた。その結果、IL-6ファミリーの一つであるCNTF(Ciliary Neurotrophic Factor)が松果体に特異的に発現していることをみいだした(Hata et al.,Neuroreport, 13(5):735-9, 2002)。従来の研究では、CNTFは成熟した脳神経系にのみ見い出され、神経系の損傷時に放出されてその修復に関与されことは知られていたが、神経系の発生過程での機能は全く知られておらず、我々の報告が最初である。現在その生理的意義を解析中である。


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