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大脳皮質領野特異的に発現する遺伝子


1.何故大脳皮質領野を研究対象とするのか?

 ヒトを含めて哺乳類は高次の情報処理を行うことができ、これは脳進化の過程で大脳皮質が顕著な進化をしたことによると考えられられます。例えば、げっ歯類の祖先から分岐したと(異論もありますが)考えられる食虫類(平均)と新・旧世界ザル(平均)、ヒトを体重を補正した上で比較すると、おおよそ下の表1のようになります。


表1:脳の大きさの種間比較(食虫類を基準として正規化)

分裂皮質  海馬   間脳  新皮質 
食虫類
新・旧世界ザル(平均) 2.2 2.6 48
ヒ ト 4.4 15 196


  この数字からだけでも、哺乳類の脳進化において大脳新皮質がいかに重要な役割を果たしたか分ると思います。興味深いのは、哺乳類の遺伝子の数は各々の種を通じて殆ど変化しておらず、大体3x109塩基対で、発現している遺伝子の数もそれ程違わないと考えられています。にも拘わらず、どうして100倍もの脳サイズの違いができるのか?非常に不思議といえます。最近の哺乳類における比較解剖学的な研究によると、げっ歯類においても凡そ20余りの基本的な領野が既に観察されます。この基本的な領野は、調べられた限り殆ど全ての哺乳類に共通に観察されます。従って、基本的な領野は哺乳類の進化に於いて保存されていると言えます。一方で霊長類(マカカ属)では視覚野だけでも30以上の領域があるとされていますが、こうした基本形は保持されながらも著しく進化してきた大脳皮質に霊長類の高次脳機能の解明の重要な鍵があると考えられます。

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